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シャラポワ、なぜセリーナに勝てない?
“天敵”にまたも惨敗で通算2勝18敗。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2015/07/10 11:30
セリーナ・ウィリアムズに敗れたのち、気丈にもファンの歓声に手を挙げて応えるマリア・シャラポワ。天敵との年齢差は5、果たして逆襲の時は訪れるのか。
ロンドン五輪でセリーナが浴びたブーイング。
もうひとつ、指摘しておきたいのがセリーナのシャラポワに対する強烈なライバル意識だ。
私は2012年のロンドン・オリンピックの決勝、両者の対戦を目の当たりにしたが、観衆は「判官贔屓」もあって、8割方シャラポワの応援についていた。セリーナは戦う前からヒール、悪役だった。
しかも試合開始直前になって、セリーナはトイレット・ブレイクを要求した。シャラポワは準備万端という状況だったし、観客も試合の開始を待ちわびていたから、大きなブーイングが起きた(会場はウィンブルドンだが、オリンピックの観客は本大会ほど行儀が良くはない)。
セリーナはそんな反応はどこ吹く風、泰然自若としてコートに戻り、今回のウィンブルドンのように完膚なきまでにシャラポワを圧倒した。
ファンの多いシャラポワに、セリーナは闘志を燃やす。
ファンもマスコミも、女子テニスには「エレガンス」、優雅さを求める傾向がある。今はダブルスで活躍するマルチナ・ヒンギスのように、プレースタイルも優雅で強い選手が好きなのだ。
セリーナ、シャラポワともにプレースタイルは男子に近く、この10年間で女子テニスシーンを変えた。もはや優雅なだけの選手が勝てるほど、甘い時代ではなくなった。
しかし、シャラポワは美と優雅さも兼ね備えており、ファンも多い。
だからこそ、セリーナはシャラポワに対してはことさら闘志を燃やす――。33歳のセリーナだが、ハード、芝のコートではいまだ衰えは見られない。
シャラポワの天敵攻略は、解決の糸口が見えないままである。