なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
宿敵アメリカに完敗も悔いは無し。
なでしこは最後まで“らしかった”。
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byAFLO
posted2015/07/06 17:00
16分で4点差、観る者の多くが諦めた試合を最後まで諦めなかったのはピッチ上の選手達だった。二大会連続決勝進出は、偉業と呼ぶに十分な結果と言えるだろう。
岩清水「想像以上のスピードでした」
優勝した前回大会はもちろん、その後もなでしこの守備の要として対戦国の前にたちはだかってきた岩清水に何が起きたのか。試合後、涙で目を腫らした彼女は、ただただチームに迷惑をかけてしまったと俯いた。
「(ロイドが大外から入ってくるのは)わかっていたんですけど、自分の想像以上のスピードでした。立ち上がりの失点は自分のせい。(3点目のクリアの場面も)自分のなかでは精一杯のプレーだったので完全に力不足。本当にチームに申し訳ないです」
2本のセットプレーはいずれも低く、早いクロスだったのは想定内だったのか。また、その後の前半の2失点を含めた立て続けの失点に、動揺はなかったのか。反応は選手それぞれだが、ダメージは大きくとも、戦意だけは最後まで失ってなかったことだけは確かである。
集中力が切れてもおかしくない展開。しかし――。
「低くて早いボールは予想していた部分。でも、練習でやっていたのとアメリカのパワーはやはり違いました。毎回工夫があり、同じパターンでもなかった。そこに関しては相手の方が、何枚も上手だったと思います」(鮫島彩)
「(低いボールを)予想はしてました。ただボールもすごくよかったですし、それを信じて入ってくる気迫も凄かった。それでも(その後の2点を含め)事故みたいな失点だったので、ハーフタイムにはここから取り返そうとポジティブな気持ちでした」(宇津木瑠美)
「最初のセットプレーで、トリックプレーに対応できなかったのがいちばん大きかった。その後の失点は対応できた部分もあったけど、それも含めて実力。ただ、そこから取り返せる可能性も感じてはいました」(大儀見)
16分にロイドに許した4点目は、相手陣内で奪われたボールをハーフウェイライン上から豪快に蹴り込まれただけに、集中が途切れてもおかしくない失点だった。しかし、ここからの戦いぶりこそが、なでしこらしかった。