詳説日本野球研究BACK NUMBER
成績と投票数の乖離が大きいセ。
オールスター中間発表に見る“迷い”。
posted2015/06/25 11:50
text by
小関順二Junji Koseki
photograph by
NIKKAN SPORTS
オールスターゲームのファン投票は、極端なことを言ってしまえば人気投票のようなもので、実力を確実に反映しているとは言えない。6月22日に発表されたファン投票の中間発表最終回を見てもそう思う。
セ・リーグ三塁手の1、2位はバルディリス(DeNA)、梵英心(広島)だが、バルディリスの打撃成績は16位(打率.260)、梵は規定打席未到達で打率.274という中途半端な成績だ。ここは打率.326で打撃成績2位の川端慎吾(ヤクルト)が1位で選出されるのが普通の感覚だと思う。
二塁手部門に目を移すと1、2位にいるのは菊池涼介(広島)と片岡治大(巨人)である。菊池は打撃成績14位(打率.267)、片岡にいたっては規定打席未到達で打率.233という低空飛行ぶりで、打撃成績7位(打率.295)の山田哲人(ヤクルト)が後塵を拝するのは納得できない。
外野手部門でも打率.242の丸佳浩(広島)が2位に居座り、打率.302の平田良介(中日)が4位に甘んじている。遊撃手は打率.258の鳥谷敬(阪神)と打率.292の田中広輔(広島)が激しいつば競り合いを演じ、捕手部門では原辰徳・巨人監督が「捕手復帰は99パーセントない」と断言した阿部慎之助(規定打席未到達)が、広島の會澤翼に肉薄する2位につけている現状も首をかしげざるを得ない。
ファン投票が知名度のある選手に集まるのは毎年恒例。
パ・リーグにも似たような投票はあって、遊撃手部門を独走するソフトバンク・今宮健太は守備が天下一品と言っても打率.200は低すぎる。ここは日本ハムのチャンスメーカーとして活躍する中島卓也(打率.287、打撃成績12位)の選出が順当だし、外野部門3位のオリックス・糸井嘉男(打率.236、打撃成績26位)がソフトバンク・内川聖一(打率.310、打撃成績8位)の上にいるのも違和感がある。
こういう現状は毎年のことで、目くじらを立てるほうが大人げないのだろう。プロ野球の現状に精通していないファンが知名度の高い人気選手に1票を投じるのは、コアな野球ファンになるための第一歩かもしれない。交流戦に入るまでセ・リーグの首位をひた走ったDeNAや、球場を真っ赤に染めるほどの人気を獲得している広島の選手が実力以上の票を得るのは、野球がエンターテイメントとして成り立っている以上、受け入れなければならない現実である。