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“いい人”ミルコ・デムーロが、
どうしても勝ちたいライバル騎手とは。
posted2015/06/19 10:50
text by
渕貴之Takayuki Fuchi
photograph by
Shigeyoshi Ohi
鞍上のミルコ・デムーロにとって2度目のダービー制覇は、
JRA所属騎手として騎乗した記念すべき勝利だった。
Number880号のインタビューで格別のレースを穏やかに振り返ったミルコが、
次なる野望を語って一瞬だけ語気を強めた瞬間とは?
あれは2007年12月のこと。
その年、日産スタジアムで開催されたクラブワールドカップ決勝、ミラン×ボカ・ジュニアーズ戦の試合後に、たまたまミルコと(その友達も)タクシーに乗り合わせたことがある。
辺りが暗かったこともあり、彼らをただのミランファンのイタリア人だと思っていたが、クルマに乗り込んで話してみるとやけに日本語がうまい。
それで、なんで日本語うまいの? と後部座席を振り返って聞いてみたら、返ってきた答えが「うん、ぼくミルコ・デムーロ」だった。
慌ててNumberの名刺を出すと、「ああ、2003年にインタビュー受けたよ」と言う。
そうなのだ、ネオユニヴァースで2冠を達成した際、ミルコはNumber587号の表紙を飾っているのだ。
ああ、ミルコさんお世話になっています!
すぐに非礼を詫びたが、当のミルコは気にする風もなく、ただただニコニコしていて、ニコニコしたまま新横浜プリンスホテルで降りていった。
ミラン勝ったしなあ。それにしてもいいヤツだなあ。いつかちゃんと取材させてもらおう――そう思ってから7年半。ようやく念願が叶った。
安田記念の翌日、「きのう、飲み過ぎた」。
夕方近くの待ち合わせにもかかわらず、待ち合わせ場所に少しだけ遅れて現れたミルコは、開口一番「きのう、飲み過ぎた」と笑う。16着に終わった安田記念の翌日である。
「お酒そんなに強くない、好きなだけ」と言うが、Number880号のインタビュー記事の筆者でミルコの飲み仲間でもある競馬ライターの平松さとしさんによれば、時には朝までコースもあるらしい。
遊ぶときは徹底的に。繊細さと豪快さが同居してるあたり、いかにも勝負師っぽい。
余談だが、ミルコは調整ルームが好きなのだとか。
素人目には競走前日から自由を束縛されるようにしか思えないが、実は集中できて都合がいいらしい。平松さんも「外国人ジョッキーは好きな人多いですね」とおっしゃる。なるほど、否応なしにメリハリがついていいのかも。
取材はまずポートレイト撮影から。
蒸し暑いなか、けっこうあちこち連れ回したけど、ミルコは嫌な顔ひとつしない。
行きすぎる人がミルコに気づけば、笑顔で手を振って常にニコニコ。