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トミー・ジョンから、急がば回れ。
楽天・釜田佳直が過ごす我慢の時。 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byGenki Taguchi

posted2015/05/29 11:00

トミー・ジョンから、急がば回れ。楽天・釜田佳直が過ごす我慢の時。<Number Web> photograph by Genki Taguchi

手術前は最速153キロのストレートを誇っていた釜田佳直。中学1年までは捕手だったが、甲子園での斎藤佑樹と田中将大の投げ合いを見て監督に投手転向を直訴したという。

「今はまだ、焦らずにやっているって感じ」

「ローテーションで投げさせてもらっていますけど、登板間隔は中9日とか10日です。今はまだ、完璧に復帰できるまでに焦らずにやっているって感じですかね」

 そう言って、再び慎重な姿勢を覗かせる。どうやら、釜田の「無理をしない調整」は順調のようだ。

 金沢高校時代から疲労骨折を経験するなど、右ひじの故障は未知の世界ではなかった。

 ただ、高卒1年目の2012年に7勝を挙げ、いきなりブレイクを果たした釜田にとって、2年目以降の不遇の日々を受け入れられるまでには、いささか時間を要した。

 '13年は、5月に右ひじの疲労骨折の影響でわずか1勝止まり。秋には手術を受け再起を誓ったものの、翌年の春季キャンプには靭帯が悲鳴を挙げた。そして3月、トミー・ジョン手術に踏み切った。

「ボールを投げられない時期がこんなに早く来るなんて」

 釜田が当時の心境を語る。

「まさか、1年間もボールを投げられない時期がこんなに早く来るなんて思っていなかったですからね」

 術後は、チームとは別メニューでランニングなどを黙々とこなし、「焦らずやっていきます」と前向きにリハビリを行なってはいた。しかし、人間にとって単調な作業ほど退屈で、不安なものはない。釜田も例外ではなかった。

「結構きつかったですね。トレーニングにしても同じことの繰り返しでしたし、『これを1年も続けなくちゃいけないのか……』とか考えてしまうと、精神的にも辛くなるじゃないですか。なんで、自分を奮い立たせるものというか、モチベーションのようなものを見つけていくしかないと思ったんですね。それが、僕にとってはサポートしてくれる周りの方たちへの感謝とか、『また一軍のマウンドで投げたい』って気持ちを切らさないでやっていくことだったんですね。それは大きかったです」

【次ページ】 手術から丸1年ぶりのマウンドで釜田は……。

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