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オークス最後の直線、ルージュよりも
なぜミッキークイーンが弾けたのか?
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2015/05/25 11:40
430kgと小柄ながら、切れ味鋭い末脚でオークスを制したミッキークイーン。5戦3勝2着2回といまだに連を外していない。
府中の直線で見せた、すさまじい末脚
3、4コーナーに入っても、案外馬群は凝縮されず、各馬の鞍上のアクションが大きくなる。
直線、まだノットフォーマルが先頭で粘っている。
ラスト400m手前でルージュバックがスパートし、ラスト200m地点で前をかわして先頭に躍り出た。そのまま抜け出しをはかるが、外のクルミナルがしぶとく食い下がり、さらに外からミッキークイーンが凄まじい脚で追い込んでくる。
「馬場がいいので、前残りに警戒しながら、ルージュバックとクルミナルについて行きました。直線では、ぼくの馬のほうが切れるという自信がありました」と言う浜中の叱咤に応えたミッキークイーンが、猛然と末脚を伸ばす。
そして、ルージュとクルミナルに並びかけた、と思ったら、もうかわしていた。
2分25秒0の勝ちタイムで、ミッキークイーンが76代目の樫の女王となった。上がり3ハロン(600m)はメンバー最速の34秒0だった。
戸崎が「最後は目標にされたぶん苦しかった」と言うルージュバックは4分の3馬身差の2着、さらに半馬身差の3着がクルミナル。そこから2馬身遅れた4着はアースライズだったのだが、なんと、1着から4着までがノーザンファームの生産馬だった。しかも、今回出走していた同牧場の生産馬はこの4頭だけだったのだから、恐ろしいほどの独占ぶりだ。「ノーザンファーム馬券」を好んで買う人なら、4140円の3連複を4頭のボックス買い(4点)で、2万150円の3連単も24点で機械的に獲れたわけだ。
池江厩舎にとって、初の牝馬GIタイトル。
ミッキークイーンは、3頭のうち2頭が出走できる抽選で桜花賞を除外され、同日の忘れな草賞に出走し、差し切り勝ちをおさめた。
桜花賞を除外されたことは不運だったが、オークスに照準を合わせて考えると、2000mの忘れな草賞でスローな流れを経験できたのは幸運だったと言える。不運に見せながら、実は幸運を持った馬だった、ということか。
これがGI通算11勝目となった池江厩舎にとって、初の牝馬GIタイトルだった。父の池江泰郎元調教師が管理したディープインパクトの産駒によるGI勝利も初めて。次の目標は、牝馬三冠目の秋華賞になる。
「いろいろな感情がこみ上げてきます。デビューしたころから世代トップクラスだと思っていましたが、ここに来てかみ合ってきました。牝馬三冠を狙っていた馬なので、きっちり二冠を獲りたいですね。コーナー4つのコースもこなせるし、右回りも上手なので、期待しています」と池江泰寿調教師。