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長谷川穂積、“予想外”の復帰戦。
「打たせない」に徹したこの男は強い。 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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posted2015/05/11 11:20

長谷川穂積、“予想外”の復帰戦。「打たせない」に徹したこの男は強い。<Number Web> photograph by Getty Images

試合直前の4月27日にスパーリングでじん帯を一部断裂しながらも、それを公表せずに戦い、長谷川穂積は勝利を収めた。万全の状態であればどこまで強いのだろうか……。

倒すボクシングから、再び打たせないスタイルへ。

 以前にも本稿で触れたが、防御勘に優れた技巧派だった長谷川がKO勝利に目覚めたのは、'05年に世界王者となってからである。以来、長谷川は倒すボクシングに傾倒し、モンティエルに、ゴンサレスに敗れてもその姿勢を崩さなかった。足を使えば勝てると思われたマルチネス戦はその最たるものだったろう。はたから見ればリスクの高いファイトスタイルを貫く姿勢に、強い意志を感じた。いわばスタイルに殉じたのだと。だからこの試合を最後に、長谷川は引退という道を選択すると思った。

 しかし長谷川にとって、マルチネス戦は「集大成」と位置づけられる試合ではなかった。

「90パーセントは満足したけど、10パーセントは不満が残った」

 10パーセントの不満とは「勝ちたい」という気持ちの部分だったという。足りないピースを埋める1つの材料が、以前のような、世界王者になる前のようなボクシングだった。

 曰く「('10年に亡くなった)母親が好きだった打たせないボクシング、父親が教えてくれた打たせないボクシングをできるだけやった」。その結果が、ほとんどパンチを被弾しない、スコア以上の完勝と言える勝利だった。

「たとえキャリアに傷がついても」

 右足首に加え、左ヒジも負傷していたことを考慮すれば、この日のパフォーマンスは上出来だったと言えるだろう。もう一度世界へ、3階級制覇へ、という流れになってもおかしくはない。

 それでも本人は「先のことは何も考えてなかったので、まずは足首の治療に専念しながら後悔のない選択をしたいと思う」と試合翌日のブログにつづった。

 試合前、長谷川は「たとえキャリアに傷がついても、世界戦ができなくても、自分のボクシング道をまっとうしたい」と語っていた。どのように道をまっとうするのか。答えはすべてを終えたときにわかるのだろう。我々はただ見守るだけである。

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