欧米人に近付いたが、骨格はしっかりしていない。

「日本人の足は、昔は幅広、アーチがないだんびろの足というようなイメージが強かったけど、今の若い子は欧米人に近付きつつある。それがいいか悪いかは別ですよ。ただ、骨格は昔に比べると、しっかりしていない。だから、故障する割合が高いんです」

　マラソンで言えば、昔は瀬古とか宗茂・猛兄弟とか中山竹通とか谷口とか、いっぱい強い選手がいて、彼らは当時でも2時間8分そこそこで走っていたのだと三村氏は言う。

「今、世界は2時間2分台に突入しました。この間、トヨタ九州の今井正人が7分39秒で走りましたけど、日本には8分そこそこで走れる選手、ほとんどおれへんじゃないですか」

　あるインタビューの記事の中で、三村氏は今井選手のことを、あいつは強くなりますよ、と評していたことがある。

「彼はね、性格がものすごく前向きだし、疑問に思ったことはすぐ質問してくる。大半の選手は質問なんかしないですから。あとは、その選手が強くなるかどうか、足を見たら大体分かります」

100人に1人、2人しかいない「5対5」の走り。

　どうわかるんですか、と尋ねる僕に、5対5なんですよ、と三村さんは答える。5対5？　禅問答である。

「足の裏で踵から着地して、体が乗っていって、キックする。この一連の動作が右と左で5対5でいかなあかんわけです」

　ちなみに、今井選手は5対5なのだそうだ。

「でもそういう人間は100人おったら1人か2人ぐらいしかいません。それ以外の人はバランスを直していってあげるしかない。例えば、6対4とか7対3で右足ばっかりキックしてたら、右のふくらはぎがすぐ張ります。ということは、それだけ右の筋力も強い。言い方を変えたらこれは、左のふくらはぎが弱いということでしょう。そうしたら、左を強くして右に合わさん限り、5対5にならないじゃないですか」

　ただし、このバランスの悪さは日本人のランナーのみに多いわけではないらしい。

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