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湯河原温泉オレンジマラソンで始まった日本初の挑戦「血糖値を測りながら走る」
posted2026/06/02 06:00
今年の湯河原オレンジマラソン。県内外から約2500人が参加
text by

君塚麗子Reiko Kimizuka
photograph by
Shiro Miyake
快晴に恵まれた3月29日、神奈川県湯河原町で開催された「湯河原温泉オレンジマラソン」。春の陽気に包まれた温泉街には、小学生からベテランランナーまで多くの参加者が集まり、地元住民はもちろん県外からも訪れたランナーたちで賑わいを見せた。
海と山に囲まれた風光明媚なコースを駆け抜ける春の人気大会。今年も多くのランナーが汗を流したが、その裏側では、ランニング界における“日本初”の試みが静かに行なわれていた。
糖尿病専門医で北里大学北里研究所病院病院長補佐・糖尿病センター長の山田悟医師が、市民ランナーを対象に「血糖値を測定しながら走る」という取り組みをスタートさせたのだ。
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近年、箱根駅伝ランナーや実業団選手の間では、腕などに持続血糖測定器(CGM)を装着し、血糖値を見ながらコンディション管理を行なうケースが増えている。トップアスリートの世界では“常識”になりつつあるが、市民ランナーが大会で実践する試みはほとんど前例がない。
「走っているから健康」とは限らない?
なぜ、温泉地の市民マラソンで血糖値測定なのか。
実は山田医師によれば、ランナー、特に細身のランナーほど“血糖値スパイク”を起こしているケースは少なくないという。
一見すると健康そうに見えるランナーでも、急激な血糖値上昇と下降を繰り返している人がいる。背景には、「軽い体ほど速く走れる」というランナー特有の価値観があると山田医師は指摘する。
体重を落とそうと食事量を減らしたり、脂質を避けて糖質中心の食事になったりすることで、結果的に食後高血糖を招いてしまうケースがあるのだ。
「特にレース前に糖質を多く摂取してエネルギーを蓄えるカーボローディングを実践している方は要注意です。ご本人はパフォーマンスアップのために行なっていることが、まったく効果がないどころか健康を脅かしている危険性さえあります。実際にリサーチをしてみると、血糖値スパイクを起こしている市民ランナーは珍しくありません」(山田医師)
だからこそ山田医師は「希望するランナーを対象に血糖値を測定しながら走る取り組みをやってみたい」と考えた。
そして、その舞台となったのが、山田医師が以前から健康増進プロジェクトに関わってきた湯河原町だった。背景にあるのは、山田医師が中心となって湯河原町で進めるヘルスツーリズム事業「湯河原×ロカボ流美食」だ。
「昨年より湯河原町の委託を受けて、温泉や美食を楽しみながら食後高血糖の改善を目指そうというヘルスツーリズムの取り組みをスタートさせました。地元レストランと連携してロカボメニューの開発と提供を行なっています」
ロカボとは、極端な糖質制限ではなく、糖質量を適正範囲に抑える“ゆるやかな糖質コントロール”の考え方。2024年改訂の日本糖尿病学会診療ガイドラインでも、その有効性が正式に明記された。
湯河原町で健康増進の取り組みを進めるなか、山田医師はオレンジマラソンの開催を知り「希望するランナーを対象に血糖値を測定しながら走るプランを用意してはどうだろう」と思いついた。


