沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
素晴らしい騎手であり、熱い男だった。
後藤浩輝騎手との思い出をたどって。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKyodo News
posted2015/04/04 10:40
2013年11月4日にエスポワールシチーに騎乗しJBCスプリントを制覇したのが最後のGI制覇となった。
競馬と、そして、馬を心から愛していた。
近くで見るとびっくりするほど胸板が厚く、腕の筋肉も格闘家のように発達していた。
1996年に単身、アメリカ・フロリダ州のカルダー競馬場に長期滞在して腕を上げ、帰国後、メキメキと頭角を現した。
本場仕込みのかろやかなアメリカンスタイルで、ゲートを出てからのポジションどりが早い。道中は余計な動きをせず、馬への負担を極力小さくした。直線では一転してダイナミックなアクションで馬の前への推進力を補助し、特に大舞台で抜群の強さを見せた。
彼は、競馬と、そして、馬を心から愛していた。騎手を目指す前は犬の訓練士になりたいと思っていたほど、動物が好きだったのだ。雨が好きだったというショウワモダン(彼の手綱で2010年の安田記念を勝った)のことを話しているときは、仲のいい友人のことを語っているかのように楽しそうだった。
昨年11月、復帰後の初勝利で「ただいま!」
前述した始球式のとき、彼は確かポニーに乗っていたのだが、マウンドの近くで落馬して球場を沸かせていた。それについて訊くと、「あのときは馬がエキサイトしていて、これは落ちるしか止める方法がないと思って、わざと落馬したんです」と言った。言外に「意味もなく落ちたわけじゃないですよ」という負けず嫌いなところが感じられて、それも彼らしいな、と思った。
大手芸能プロダクションとマネージメント契約を結んでいたのも、「完璧、ウケ狙いです」と笑っていた。
昨年11月24日に東京競馬場で復帰後初勝利を挙げると、ウィナーズサークルで「510(ゴトウ)」と書かれた拡声器を手に「ただいま!」と叫ぶパフォーマンスを見せ、観客を喜ばせていた。その日、私が「おめでとうメール」を送ると、こんな返信が来た。
「(武)豊さんやユーイチ(福永祐一)、そして岩田(康誠)くんがいる中で勝てて何だか嬉しかったです。少しホッとしましたが身体は気持ちいいくらいボロボロです(笑)。でもまた来週頑張ります!!」