サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
守備もオフザボールも、やればできる。
自らのイメージを裏切った宇佐美貴史。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/04/02 16:35
合宿中から岡崎のプレーに刺激を受けていると語っていた宇佐美。「(岡崎の)パスが来なくてもずっと続けてプレーしていく根気と、そこからチャンスにつなげる粘り強いところを見習っていきたい」
2人のマークをかいくぐるアイディアと技術。
そして、攻撃でもすぐにピッチを彩ってみせる。
76分、右サイドの高い位置に流れてボールを受けると、自分を追い越そうと走りこんできた本田にボールをスイッチするような形でヒールパス。相手が守備を固めるバイタルエリアで、いきなりアイディアプレーを披露する。
そして83分の本田のゴールにも、宇佐美はしっかり絡んでいる。
最終ラインの吉田麻也から中盤にいた本田に鋭い縦パスが入る。本田はすぐに体を反転し、右斜め前方にパスを送った。そこに走りこんでいたのが、宇佐美。前には侵入を塞ぐDFが1人立ち、パスをトラップした瞬間にさらに左側からもDFが襲いかかってきた。厳しい球際でのプレー。求められたのは、指揮官が要求している素早い判断と積極性だ。
そこで宇佐美は、体を右側に開きながらトラップし、左から来る敵をボールに食いつかせる。次の瞬間、勢い良くボールに飛び込んでくる相手の逆を突くように、左方向にまたしてもヒールパス。タイトな局面において、宇佐美はフリーの岡崎を視野に入れながら、2人のDFに寄せられるプレッシャーを一瞬のアイディアと技術でかいくぐってみせた。
「足元でボールを欲しがる」というイメージを覆す動き。
さらに後半44分、今度は彼の印象を打ち破るプレーが飛び出した。
香川が中央でボールを持つと、左サイドに膨らんでいくように宇佐美が走っていく。香川はタイミングを図りながら、スルーパス。宇佐美はボールを受ける瞬間、膨らむ動きから相手の裏を突く縦へのダッシュに切り替えた。右足で放ったシュートは、惜しくも右ポスト直撃。天を仰ぎ苦笑いしていたが、完璧なオフザボールの動き出しは、常に足元でボールを欲しがる印象だったこれまでの宇佐美のイメージを覆した。
2年4カ月ぶりの代表招集、そして代表デビュー戦だったが、試合後の宇佐美は落ち着いていた。
「攻守の切り替えは監督からも口酸っぱく言われていたし、おろそかにしないように。攻撃ではある程度技術が優れた選手たち同士であれば、分かり合えると試合前から思っていた。そのあたりの片鱗は、少しですけど出せたと思います」
前日練習では、ミニゲームの流れに入っていけないように見えたが、宇佐美には、本番になれば周囲の選手たちとしっかり連係しながら共存していけるという計算があったということか。そして彼の言うとおり、それは片鱗どころかしっかりプレーの連続性という形で現れていた。