サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
選手の“個性”を引き出す明確な指示。
ハリルホジッチが青山に伝えたこと。
posted2015/04/01 11:40
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
一本のシュートに魂を吹き込んだ。
一本のシュートが、チームに魂を吹き込んだ。
3月31日のウズベキスタン戦、5点のゴールラッシュは、青山敏弘のミドルシュートから始まった。
前半6分、左コーナーキックから相手GKに弾かれたボールが、2バウンドして青山の前にこぼれてきた。30m近い距離があっただろうか。彼は迷うことなくそのまま右足を振り抜き、アウトにかかったボールはゴール右上に突き刺さった。
「来たら打とうと思っていた。浮かさないように、力まず、しっかりミートして。監督もミーティングで“ミドルを狙っていけ”と言っていました。“絶対に枠に入れろ”と」
絶対に入れてやる。心の声が、確かに聞こえた。
ブラジルW杯以降、代表から離れていた。あのコロンビア戦でゴール前に侵入してくるハメス・ロドリゲスに対して体を寄せきれず、結果的に勝ち越しのゴールを許すきっかけをつくったことに苦しんできた。己を責める自分がいた。
コロンビア戦の次にピッチに立つ試合で結果を出すことに意味があった。過去を過去とするためにも。逃げずに正面から向き合い、それが成長の糧となったことを証明するためにも。
咆哮――。
代表初ゴールを挙げた背番号28はジャンプしてガッツポーズを繰り出し、何かを叫んだ。そしてベンチに走り出していた。先発メンバーのみならず、控えのメンバーからも祝福を受けた。
火をつけた。これからチャンスが来るであろうと信じる控えのメンバーの心にも。
太田宏介「出たら上げようと意識していた」
一本のクロスに魂を吹き込んだ。
後半9分、途中出場の太田宏介は乾貴士が仕掛けて左サイドにこぼれたボールに追いつき、ファーサイドで待つ岡崎慎司に正確なクロスを送ってアシストした。
「一本目のクロスでふかしたので、(2本目は)だいぶ集中したし、オカちゃんがフリーでいたのは見えていましたから。練習でもクロスのことは監督も言っていて、前半はベンチで見ていてそういうシーンがあまりなかったので、自分が出たら上げようと意識していました」