サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
選手の“個性”を引き出す明確な指示。
ハリルホジッチが青山に伝えたこと。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/04/01 11:40
青山敏弘が決めたスーパーボレーを見たハリルホジッチ監督は、両手の人差し指を天に向け、満足気な表情で拍手を送っていた。
他の選手とは異なる特長を、試合で出すために。
出場は昨年11月のオーストラリア戦以来。アジアカップでは1試合も出場機会がなかった。準々決勝のUAE戦で敗れた後、一点を見据えてこう語っていたことを思い出す。
「出たらやれるという自信は常に持っていました。(他の選手とは)違う特長を持っていると思うし、ピッチに立てなくて何も表現できなかったというのはやっぱり悔しいですね」
FC東京に戻って、クロスの質をより高めようとしてきた。代表は、簡単に試合に出られる舞台でないことは分かっている。出た試合で、結果を残す。守備では突破される場面やクロスを入れられてしまう場面もあったが、彼もまた「一本」に懸けていた。
太田は言った。
「競争があるなかでみんな気合いが入っていたと思う。自分もクロスで結果を出したいという思いがありました」
柴崎、宇佐美、川又が続いた“らしい”ゴール。
途中出場の柴崎岳が、宇佐美貴史が、川又堅碁がゴールを挙げた。
いずれも“らしい”ゴールだった。柴崎はGKが前に飛び出してきたのに合わせてロングループで決め、宇佐美はドリブルで抜けてから落ち着いてゴールの逆サイドにきっちりと、そして川又は右CKからの折り返しを泥臭く頭で押し込んだ。「一本」に対する強い意欲が伝わってきた。
ボランチに入って体を張った水本裕貴、そして右のサイドハーフに入った大迫勇也もそうだ。普段とは違う位置で、己の役割をこなした。中でも大迫のプレーは目を引いた。相手のFKからのこぼれ球を彼が前に全速力で出てブロックしたからこそ柴崎のゴールが生まれ、彼のポストプレーが宇佐美のゴールを引き出している。
一本のシュート、一本のタックル、一本のブロック、一本のポストプレー。
交代して出てきたメンバーたちは、課せられた役割にプラスして自分の持ち味を出そうとしていた。