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選手の“個性”を引き出す明確な指示。
ハリルホジッチが青山に伝えたこと。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2015/04/01 11:40

選手の“個性”を引き出す明確な指示。ハリルホジッチが青山に伝えたこと。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

青山敏弘が決めたスーパーボレーを見たハリルホジッチ監督は、両手の人差し指を天に向け、満足気な表情で拍手を送っていた。

ほとんどの選手を出場させ、競争を煽る。

 それもこれも、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の采配抜きには語れない。前半、前掛かりになってボランチと最終ラインの間を使われていたことが気になったものの、後半は低く構えてカウンター狙いに切り替えてウズベキスタンを翻弄した。戦術面もさることながら、この2試合でフィールドプレーヤーを全員使い、競争を意識させ、明確に指示を与えたことが彼らの勝負の「一本」を引き出した。

 魂の90分間をリードしたのは他でもない、フル出場した青山だ。

 縦パスを送り続け、速い攻撃を心掛けた。チームのベクトルを絶えずゴールに向けさせた。守備では空中戦で体をぶつけて競り合い、球際の勝負でひるまない。水本に指示を出し、岡崎には前にボールを出すというジェスチャーもしていた。青山個人の熱さが、チームの熱となっていた。

あの一発はチームよりもまず、自分に火をつけた。

 試合後の取材エリアに、青山は最後のほうに入ってきた。

 最後の最後、ひとつ聞いておきたいことがあった。

 最初のゴールが、チームに火をつけたように思うのだが。そう尋ねたら、青山はこう語った。

「あの一発で僕自身に、火がついたと思うんです」と。

 重い言葉だった。

 エネルギッシュに燃え続けた90分の尺を指しているだけではなかった。ブラジルW杯で一度止まっていた「代表戦士」としての時計の針を、もう一度進めていける。その導火線に、しっかりと火がついたことを感じ取っていた。

「また代表での活動が自分のなかで動き出しました。新たな目標もできたし、ロシアに向けていい試合になったかなと思います。ここから、ここから、頑張ります」

 青山敏弘の目に、力が宿っていた。

 ブラジルW杯で悔やんだあの一本のプレーは、もはや過去になった。過去を受け止めたからこそ、今の彼がある。

 一本、一本に魂を込めて――。

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