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早くもリオ五輪の金メダルが見えた!?
競歩世界新記録・鈴木雄介の可能性。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2015/03/17 11:45
鈴木は、中学時代には3000m競歩、5000m競歩でそれぞれ中学最高記録をマーク。高校・大学・社会人と、国の内外を問わず各種大会で優勝してきた。
昨年のアジア大会で金メダルを獲っている谷井孝行。
2月の日本選手権では、岩手大学4年生・22歳の高橋英輝が鈴木を2位に従えて優勝。今夏北京で行なわれる世界選手権の日本代表にひと足早く内定している。
昨秋のアジア大会では、世界有数の強豪国である中国がベストメンバーではなかったにせよ、50km競歩で31歳(当時)の谷井孝行が金メダルを獲得している。
さらに若い世代の成長も見逃せない。
昨年の世界ジュニア選手権(19歳以下)1万mでは、松永大介が金メダル。一昨年の世界ユース選手権(17歳以下)の1万mでは、山西利和が金メダルを手にしている。
躍進のきっかけのひとつに、競歩が2001年から全国高校総体の正式種目になったことがある。明確な目標ができたことにより、競歩により真剣に打ち込む高校生の選手が増えたのだ。
五輪代表選手が、普段はアルバイト生活をしていた!?
競技環境が変化してきたことも大きい。
鈴木のコーチである今村文男氏は、バルセロナ、シドニーオリンピック出場をはじめ、長年に渡り日本競歩界を牽引してきたパイオニアとも言える存在だ。にもかかわらず、アルバイトをしながら活動していた時期もあったということが、以前の競歩を取り巻く環境を物語る。
だが、世界選手権入賞者が出るなど少しずつ成績をあげることで、実業団に迎えられる選手も増えてきた。それはより充実した練習ができるようになったということでもある。鈴木は陸上競技界の名門・富士通に籍を置いており、谷井は自衛隊に所属している。
こうして、世界上位を争う力を備えた選手たちがそろい、層も厚みを増したのが今日の日本競歩界なのである。
鈴木は日本において競歩の認知度が低いことを分かった上で、こう語っている。
「クネクネしているとか笑われてもいいんです――どういう面白さなのかは別にして、まず、見てもらえれば」
今や第一人者と言える位置につけたからこそ、長年にわたってマイナー競技とされてきた競歩に打ち込んできたからこそ、この競技の地位を少しでも上げていきたいという、強靭な意志を感じるコメントだ。