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早くもリオ五輪の金メダルが見えた!?
競歩世界新記録・鈴木雄介の可能性。
posted2015/03/17 11:45
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Kyodo News
3月15日、石川県能美市で行なわれた陸上全日本競歩能美大会で、快記録が生まれた。
男子20kmで、鈴木雄介が世界新記録となる1時間16分36秒で優勝したのである。
前週の8日、フランスのヨアン・ディニがマークした1時間17分2秒の世界記録をわずか1週間で更新。しかも陸上の五輪・世界選手権実施種目では、日本男子として50年ぶりの世界記録でもあった。
この成績をもって今夏に北京で行なわれる世界選手権日本代表に内定した鈴木は「自分でもびっくりです。まさか出るなんて」と語っている。だが、世界記録は決してまぐれではない――鈴木は、そう言えるだけの地力を備えているのだ。
小学生時代から競歩を始めていた鈴木。
現在27歳の鈴木は、今回の大会が行なわれた能美市出身。実は競歩が盛んな地域でもある。そんな土地柄もあって、小学生時代から競歩に取り組み始めたという鈴木。高校時代から始める選手が多い中で非常に珍しい例とも言えるが、早く始めていた分だけ他の選手よりも競歩を熟知し、早くもユース、ジュニア世代から活躍していた。
大学時代は世界ジュニア選手権の1万mで銅メダルを獲得。2011年の世界選手権20kmでは8位に入賞するなど、そのときどきの大会で実績を積み上げてきてもいる。
2012年のロンドン五輪は故障による練習不足の影響で36位に終わったが、その後も着実に力をつけてきた。そして、ついに昨年の世界ランキングは1位に。ワールドカップでも4位と、常に世界の上位争いを繰り広げる選手にまで成長していた。
日本人選手が世界記録を出すのが当然の競歩!?
今回、競歩における世界記録が日本の選手によって誕生したことは、驚き、さらには意外性をもって世間で迎えられた感がある。
確かに、オリンピックや世界選手権で日本がこれまでメダルを獲得したことは無いのだが、それ以上に、この世間の反応は競歩という競技が日本で知られていないという状況を象徴しているのだと思う。
なので、今回の世界新記録樹立を説明する前に、その背景としての日本の競歩の現在を説明しておきたい。
日本競歩界は鈴木に限らず、この数年で世界の頂点で戦えるところにまで急成長を遂げてきているのだ。