マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
千両役者・黒田と「たまごっち」女子。
様変わりしたプロ野球キャンプ風景。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byShiro Miyake
posted2015/03/03 11:25
「キャンプシーズンが一番楽しい」という声もあるほど、プロ野球にとって春のシーズンは大切なもの。そして、その楽しみ方も人それぞれなのだ。
キャンプ地の駐車場を埋める車の半分はレンタカー。
キャンプ地は、どこも駐車場が広い。
その広大な駐車場が、土日になると選手たちがやって来る前から一杯になる。
ナンバーを見るともなく見ていると、半分ほどがレンタカーである。10年ほど前までは、春のキャンプは地元のファンたちの大きな楽しみになっていた。
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ペナントレースがなかなか見られないかわりに、春のキャンプは毎日タダで見られる。それが地元のファンの特権であった。
ここ数年、それが変わりつつある。
顔はすましていても、胸が躍ると急ぎ足になる。
熟年の、おそらく会社は去年リタイアしましたぐらいのご主人が、奥さまを連れてキャンプ地めぐり。そんなふうにしか見えない“フルムーン・カップル”がとても多くなった。
いいなあ……と思う。
おたがい、熟年である。キャッキャとはしゃいだりはしない。多くの場合、二人は無表情で車を降りる。オトーサンのほうが怒っているみたいな顔で降りてくるのは、これはもう照れ隠しである。
オレはべつに来たくて来たんじゃない。せがまれて、しょうがなくて来てやったんだ。そんなことが顔に書いてあるように見えているのは、照れである。
そこへいくと、オカーサンのほうは落ち着いたものである。いつもの買い物をするスーパーの駐車場で車を降りた時と同じ顔だ。
淡々と、飄々と。
すました顔で降りてきても、先を行くオトーサンを小走りに追っていくその足がはずんでいる。顔はとりすましていても、胸躍る思いの者が足の裏を人に見せて先を急ぐのは、野球の選手もキャンプめぐりのオカーサンも同じであるようだ。
春である。
沖縄のキャンプ地で見かけたご夫婦を、宮崎の球場でも見かけ、泊まったホテルの朝食でもいっしょだったときはびっくりした。考えることは、みんな似たようなものだ。
プロ野球のキャンプ地の周辺には、観光スポットも多い。沖縄も南九州も、土地柄だけでも魅力的な場所でもある。