野球善哉BACK NUMBER
中日・大野のビッグマウスに異変?
芽生えはじめたエースの自覚と目標。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/02/25 12:00
目標とする投手は藤川球児という本格派左腕。ローテーションの一角として真価が問われる今シーズン、どういうピッチングを見せるのだろうか。
「その球を持っているのに、なんでもっと勝てないんだ」
大野はその点では例外だ。しかしそれでも、中日が大野を必要としたのは、育成に時間をかけてでもものにしたいエースとしての器、ボールの質の高さがあるからに他ならない。
田中将大、前田健太など豪華な同級生に比べて、地道に歩みを進めてきたが、段階を経て、大野は着実に成長してきた。球界を代表する大投手の道へ、期は熟している。
「自分はいきなりバーンと上がっていくことができる選手ではなく、階段を一段一段上がっていって、結果を出していく投手だと思っています。その年、その年にあった目標を達成していくことを大事にしてきました。その後に先が見えてくるのかなと。今年はローテに入って3年目の気持ちでいるんですけど、今までは『その球を持っているのに、なんでもっと勝てないんだ』って、コーチにも先輩にも言われてきました。その意味を考えて投げていきたいと思います。それができるようになれば、必ず結果もついてくると思う」
開幕が近づけば近づくほど、「開幕投手」への注目は増すだろう。中日は24日の練習試合で、開幕投手候補と目される、吉見、山井、大野の3人が登板した。大野は2失点とほろ苦いスタートとなったようだが、熾烈な争いと書き立てるメディアの喧騒をよそに、大野は寡黙に歩みを進めるのだろう。
自分が言わずとも、任される――。
大野の言葉に、次代のドラゴンズを背負って立つ男の“矜持”を感じた。