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<体幹トレの落とし穴> 体幹トレのせいで怪我をする!? ~ローカル筋とグローバル筋~
text by
成田智志Satoshi Narita
posted2015/03/10 11:30
多裂筋、大腰筋は姿勢の安定とコントロールを司る。
多裂筋は背骨に沿った縦に長い筋肉で背骨の突起に接続しており、腹横筋と共に働くことでスムーズな運動を実現している。これはランニングや投球のような主に手足を使う運動でも同じで、腹横筋が腹圧を調整し身体の「芯」を固めると同時に、多裂筋が背骨の微妙な動きをコントロールして繊細な動きを実現する仕組みが無意識のうちに体幹の奥で働いているのだ。
大腰筋も背骨の下部である腰椎にくっついており、姿勢の安定とコントロールに寄与しているのでローカル筋の仲間だ。
一方、グローバル筋は腹直筋、腹斜筋に代表される皮膚に近い体幹筋のこと。主に胸郭と骨盤の間にあり、ローカル筋とは違い背骨には直接つながっていない。
体幹を鍛える効果として、よく「当たり負けしない身体になる」や「芯の強い肉体を手に入れる」などが挙げられるが、ローカル筋のトレーニングがおろそかであれば体幹が安定せず腰がぐらつきやすくなる。腹直筋の割れた美しいボディであっても、外見とは裏腹に運動のパフォーマンスはお粗末なままだ。
ローカル筋はグローバル筋よりも「先読み」をする。
金岡先生は日本の五輪水泳チームのチームドクターを長年務め、日本水連の医事委員長でもあるため多くの一流スイマーのトレーニングを手がけてきたが、オリンピック級の選手でも上手くローカル筋を使えていない人がいたという。
「まして体幹筋のことを正しく知らぬまま、見よう見まねで体幹トレをはじめた一般の人の多くはローカル筋ではなくグローバル筋を鍛えている結果になっていることが多いですね。これはいけません」
なぜなら人間の身体は歩くにしても、激しい運動をするにしても、かならずミリコンマ数秒の差でローカル筋が「先読み」してグローバル筋より先に動いていると研究が進むにつれてわかってきたからだ。
この「ローカル筋優位」が体幹の安定と微妙でなめらかな動きを産み出すカギだったのだ。しかし間違った体幹トレでグローバル筋ばかりを鍛えてしまうとローカル筋が先読みして働いてくれないばかりか、逆にグローバル筋がローカル筋より早く動くようになってしまい、ロボットのようなぎくしゃくした動作になるので怪我をしやすくなるという。