ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
ゴルフ“一発屋”にまつわる方程式。
優勝以外の賞金でシードを獲得せよ。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byKyodo News
posted2015/01/28 10:50
竹谷佳孝は2006年のプロ転向後、日本プロゴルフ新人選手権などで優勝したが、ツアーでの初優勝までには7年以上の時間を要した。
昨年初優勝勢は、ほとんどがこの数字をクリア。
竹谷でいえば、2014年の年間獲得賞金額は6453万8290円だった。日本ツアー選手権で獲得した3000万円を引くと、約3453万円となる。翌年のフルシード獲得となる60位('14年は61位に繰り下がり)のボーダーラインは1609万2039円だったため、優勝賞金を除いてもこの数字を大きく超えている。
昨年の日本男子ツアーで初優勝を遂げたのは、竹谷や岩田寛ら6人。その全員がこの数式をクリアしている。
ちなみに日本女子ツアーでは初優勝者が9人。アマチュアの勝みなみ、米ツアーを主戦場にしているイ・ミヒャンを除くと、台湾のフェービー・ヤオ、昨年初旬まで段ボール製造工場でアルバイトをしていたという前田陽子の2人だけが、わずかに届かなかった。この指標でいえば、来季以降に真価が問われそうだ。
“不思議の勝ち”ではなく、実力の上に初勝利を。
大会によって賞金額が異なるため、ややもすると乱暴な数式ではあるが、第一線で活躍する選手は確かに、この方程式をあっという間にクリアしてきた。
2008年にプロ初勝利を得た石川遼は、マイナビABCチャンピオンシップでの初優勝時の獲得賞金以外に、約7600万円を稼いだ。谷口や片山、藤田寛之らのベテラン、中堅世代の小田孔明、谷原秀人。若手で台頭する藤本佳則、小平智、薗田峻輔らも、初勝利をマークした年にこれを軽々と越えた選手たちだ。鳴り物入りでプロ転向した池田勇太、松山英樹となると、初優勝を飾ったシーズンに4勝を挙げた。
“不思議の勝ち”や、突然変異のようなものではなく、実力をコンスタントに示した結果、初勝利が生まれた。それが一発屋とは違う、トップクラスの選手たちの若かりし頃だった。