松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

ミスへの寛容さと、最終日の魔物。
松山英樹の2位から優勝までの距離。

posted2015/02/05 10:50

 
ミスへの寛容さと、最終日の魔物。松山英樹の2位から優勝までの距離。<Number Web> photograph by Nozomu Nakajima

松山英樹は今季すでに3位以内に3度入り、いつ2度めの優勝を果たしてもおかしくない状態だ。

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

PROFILE

photograph by

Nozomu Nakajima

 松山英樹が米ツアー2勝目に迫りながら惜敗に終わったフェニックス・オープン最終日の夜。TPCスコッツデールの夜空に灯る月の光が美しかった。

 それは、優勝したブルックス・ケプカにとっては満足に満ちた真ん丸い満月。しかし、わずか一打差で勝利を掴み損なった松山にとっては、真ん丸な満月のようで実はその一歩手前の待宵月(まつよいのつき)。2つの月の丸さの差は、本当に本当にわずかな差。だが、どんなに僅差でも2位と優勝がまったく異なるように、満月の手前の待宵月は、まだ満月ではない。

「やっぱり勝ちたい……」

 満月を目指していたのに、この日の松山は待宵月に甘んじてしまった。けれど、満ち欠けを繰り返す月がいつか必ず満月になるように、彼の月も必ず真ん丸い満月になる。

 そんなことを考えながら、夜空の月の美しさにしばし見入った。

 フェニックス・オープン最終日。1番をチップイン・イーグルで発進し、前半で4つスコアを伸ばした松山は、後半の13番でバーディーを奪い、ついに単独首位に立った。

 スタート時点では3打もあった首位との差を着々と縮め、逆転した彼のゴルフ。バーディーパットや難度の高いパーセーブパットを沈めるたびに観衆から賞賛の拍手を浴び、その拍手に微笑を浮かべながら手を挙げて応える。そんな彼は勝者にふさわしい貫禄を醸し出していた。

掴みかけていた勝利は、14、15番ホールで消えた。

 掴みかけていた勝利。67ホールを終えたとき、ほぼ掌中にあった勝利。それが、彼の手から滑り落ちていったのは、なぜか。

 単独首位に立った直後の14番。3パットしてボギーを喫し、首位タイへ後退。そして、スコアを伸ばすべきパー5の15番。ティショットが右に曲がり、深いラフにつかまってパーどまりになった。

「14番のボギーは痛かった。15番のティショットをミスしたのも、すごく痛かった」

 後退し、停滞した松山を尻目に、ケプカはイーグルを奪って一気に首位へ浮上。その2ホールが勝敗の分岐点になった。

【次ページ】 ミスにも寛容に構える「寛容な松山」という状態。

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