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2014年を終えた羽生が今、思うこと。
「壁の先には壁しかないのかな」
posted2014/12/29 13:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Yohei Osada/AFLO SPORT
2014年12月27日、長野ビッグハットで開催されていたフィギュアスケートの全日本選手権のフリーを終えた後、ミックスゾーンに姿を現した羽生結弦は、いつもの大会にも増してスッキリした表情を見せていた。
「ホッとしています」
ショートプログラム1位で迎えたフリーでは、最終グループの6人のうち3番目に登場。冒頭の4回転サルコウで転倒。続く4回転トウループは成功し、その後のジャンプは次々に成功させていた。ただ演技の出だしから僅かではあるがスピード感に欠けるなど、本調子ではないことをうかがわせてもいた。
羽生もそれを認める。
「(演技の内容については)若干、悔しい部分はあります。スピンのとき(氷の)穴に引っかかる不運もありましたけど」
その一方で、こうも言った。
「でも、いい試合でした」
何が、羽生にそう感じさせたのだろうか?
3連覇以上に羽生に満足を与えた事とは?
羽生は大会がすべて終了した後、「体調が悪かった」と報道陣に明かしていた。
「グランプリファイナル後の疲れがとれていないということもありますし……体調がとにかく悪くて体力的にしんどかったです。公式練習でも調子が上がらなくて」
だが、ミスこそあったものの、フリーでは192.50の高得点をマーク。ショートとの合計286.86もまた、他の選手を圧倒している。
結果もさることながら、羽生に満足感をもたらしていたのは、別なものだった。
「スピードを落としても最後までやりきれたこと。特に後半のトリプルアクセル2つをやりきることができたのは、よかったと思います」
コーチの目からもはっきりと分かるほど悪いコンディションでも、なんとかまとめあげることができたことを、自身、高く評価したのだ。