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2014年を終えた羽生が今、思うこと。
「壁の先には壁しかないのかな」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2014/12/29 13:00
高橋大輔に続き全日本フィギュア3連覇を果たした羽生。ジュニアGPファイナルを制した宇野昌磨(17歳)が2位となった。
体調が悪くても――「いい試合でした」。
そんな条件下で滑りきったことが、むしろ貴重な経験になったとさえ思ったという。
「体調が悪い中でどうやればいいか。特にサルコウをどう跳べばいいかを意識することができました」
羽生は、体調が悪くても最後まで自分をコントロールして大会を終えられたことを、高く評価し、「いい試合でした」とコメントしたのだ。
思えば、羽生にとっての2014年は、シーズンをまたいで、多くの経験を重ねた、長い1年だった。
普通のスケーターでは経験できない特別な1年に。
まずソチ五輪があった。オリンピックの金メダリストとなってからはこれまでにない脚光を浴び、多忙な日々を送ることになった。その中で、世界選手権にも出場した。
新しいシーズンとなってからのグランプリシリーズでは大きなアクシデントもあり、そこから再起してのグランプリファイナルの連覇があった。
当たり前だが20歳の身には、かつてなかった異常な1年となったはずだ。
全日本選手間の優勝が決まった直後には、羽生自身もこう語っていた。
「今年はオリンピックから始まり、ほんとうにたくさん経験させてもらったなと思います。いつも以上に精神的にも肉体的にもいろいろなことがありましたし、それは誰もが経験できることじゃない。例えばオリンピックの後のシーズンに臨む王者としての心構えや、中国杯でアクシデントがあって、その後のNHK杯でボロボロだったりと……。ふつうのスケーターなら経験できないことをたくさんさせていただいた1年だったと思います」
そんな1年を締めくくる大会でもまた、悪コンディションに立ち向かうという経験を得たと、このまだ20歳の世界王者は言っているのだ。
どんなに大きなアクシデントであろうとも、直面した出来事をすべてしっかりと受け止め、むしろ貴重な経験として糧にできることこそ自分の強さなのだと、本人も自覚しているのだ。
加えてもう1つ、今回の全日本選手権は、羽生の強さの源が示された大会でもあった。
それは、全選手が演技を終えて、全日本選手権3連覇が確定した後の言葉にあった。