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海老沼を倒し、世界一の高校2年生。
柔道66kg級・阿部一二三の快進撃。
posted2014/12/21 10:50
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
柔道界に、鮮やかに現れた期待の星がいる。
66kg級の阿部一二三である。
阿部は現在高校2年生だが、その勢いはとどまるところを知らない。
8月はじめの全国高校総体をオール一本勝ちで優勝すると、同月のユースオリンピックでも、すべて一本勝ちで金メダル。
20歳以下で争われる9月の全日本ジュニア選手権でも優勝。世界ジュニア選手権日本代表に選ばれ、銀メダルの成績を残して迎えた11月の講道館杯でも優勝を収めた。同大会を高校3年生で制した男子は過去3名いたが、高校2年生での優勝は初めてのことだった。ちなみに高校3年生で優勝したのは73kg級の高松正裕、100kg級の鈴木桂治と石井慧と、そうそうたる顔ぶれが並ぶ。
第一人者・海老沼匡に押し込まれるも……。
その勢いが買われ、阿部は12月上旬グランドスラム東京の日本代表に選ばれる。
初戦を勝ち上がった阿部は、準々決勝で今年夏の世界選手権銅メダリスト、ザンタラヤ(ウクライナ)から技ありを奪って勝利。準決勝ではロンドン五輪銅メダル、世界選手権3連覇中の海老沼匡との対戦となった。
まさに相手は第一人者である。開始早々に有効を奪われ、直後に指導も受け、やはり世界の頂点との差を思い知らされるかに思われた。
だが、すぐに流れは変わった。阿部は持ち味である接近しての戦いを挑む。積極的に前に出ると、残り46秒で返し技をしのいで大内刈で技ありを奪って逆転。その後も守勢にまわることなく海老沼に勝利した。
試合開始直後は海老沼の強さを感じ取り「様子を見てしまった」という。それでも「このままでは勝てないと思い」、本来の前へ出る姿勢を取り戻した阿部。それが逆転につながった。
続く決勝でも、ポラック(イスラエル)から有効を奪い、相手に隙を与えず優勝。この大会を高校生で制したのは、男子では初めてのことだった。