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年間無失点記録を更新した西川周作。
レガースに刻まれた「笑門来福」。 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byJ.LEAGUE.PHOTOS

posted2014/11/07 10:50

年間無失点記録を更新した西川周作。レガースに刻まれた「笑門来福」。<Number Web> photograph by J.LEAGUE.PHOTOS

横浜F・マリノスを完封し、年間無失点記録を樹立して揚々と引きあげる西川周作。Jリーグ随一の守護神は、浦和に優勝をもたらすことができるか。

繋ぐスタイルにリスクが伴うのは百も承知。

 もっとも、28節のベガルタ仙台戦では、バックパスを処理する際に相手FWに奪われ、決勝点を与えてしまった。簡単にクリアせず、味方に繋ごうとする西川ならではのミス。しかし、だからといって西川を責めるチームメイトは誰もいない。西川もまた、仙台戦のミスを引きずり、繋ぐスタイルを放棄することはなかった。

「GKだからと言って、守備だけで終わりたくないんです。もちろん、まずは守備に集中。でも取ったあとは、攻撃の時間だと思っています。このスタイルをやるにあたってプレッシャーはもちろんありますけど、そのプレッシャーを楽しむようにしているんです。ミシャ(ペトロヴィッチ監督の愛称)も『怖がる気持ちはいらない』と言ってくれますから」

 右サイドバックだった西川がGKに転向したのは、小学校4年生のときだ。試合の日にチームのGKが休み、体の大きかった西川が代わりに指名されたのが、きっかけだった。

「地面は硬くて痛いし、セービングの仕方も分からない。とにかくイヤで、イヤで仕方なかった。でも、その後もGKをやらされて……」

 翌年PK戦に勝ってヒーローになり、初めて「GKっていいもんだな」と思うようになったが、それでもフィールドプレーヤーに未練があったから、シュート練習では列に並んでシュートを放った。左足のキックを特訓したのも、この頃のことだ。

「左足のキックが本当にヘタで。レフティってかっこいいじゃないですか。左利きに憧れてずっと練習していたら、いつの間にか左足のほうが得意になりましたね」

広島でペトロビッチの薫陶を受け、真の「攻撃的なGK」に。

 左が利き足だと思っている人もいるかもしれないが、もともと右が利き足。あの惚れ惚れする、正確かつ鋭い弾道の左足のキックは、小学生時代からの努力の賜物なのだ。

 大分トリニータU-18時代から、「FKも決めるGK」として有名だった西川が、本当の意味で「攻撃的なGK」、つまり、ビルドアップでも貢献できるGKへと成長を遂げたのは、'10年にサンフレッチェ広島へと移籍してからだ。

「大分が財政的に厳しくて、移籍金を残すことがクラブのためだと思ったので移籍を決断したんですけど、いくつかのオファーの中から広島を選んだのは、ミシャのサッカーが面白そうだと思ったからです。大分ではどちらかというと止める仕事のほうが多くて、キックの部分はそんなに出せなかった。でも、ミシャは攻撃の起点になれるGKを求めていたので、ここならプレーの幅を広げられるんじゃないかと思ったんです」

【次ページ】 西川が狙う「もう一つの」無失点記録。

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