Jをめぐる冒険BACK NUMBER
年間無失点記録を更新した西川周作。
レガースに刻まれた「笑門来福」。
posted2014/11/07 10:50
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE.PHOTOS
「ゲームメーカーになりたいですね」
試合の流れを掌握し、攻守においてチームをコントロールする存在――。それを目指すのが中盤の選手なら、さして驚くことはない。だが、その言葉を発したのは、チームを最後尾から支えるGKだった。
「ビッグセーブ一発で試合をグッと引き締められるし、足技ひとつで攻撃の起点にもなれる。僕はGKってゲームをコントロールできる存在だと思うんです。ゲームメイクできるGK。それを極めていきたいですね」
その言葉の主、浦和レッズのGK西川周作が11月3日の横浜F・マリノス戦で今季16度目のシャットアウトを成し遂げ、GKのJ1年間完封記録を更新した。J1リーグは31試合を終えたところだから、実に2試合に1回以上の割合で完封してきたことになる。
もちろん、今シーズンの浦和の守備が堅いのは、チーム全体の守備意識が高まっているからでもある。だが、「西川の存在に依るところが大きい」と言い切ってしまっても、異論を唱えるチームメイトはいないだろう。
中村憲剛「周作の加入で浦和は変わった」
そして、それは対戦相手も認めるところだ。例えば、8節に完封負けした川崎フロンターレの中村憲剛は、こんな言葉でライバルチームの守護神を称えている。
「声掛けとか、意識付けとか、周作が加入したことで浦和は変わったし、単純にビッグセーブも多い。キックもフィールドプレーヤー並に上手いし、素晴らしいGKだと思う」
GKがバックパスを大きくクリアしたり、タッチラインの外に蹴り出してしまえば、マイボールを手放すことになる。逆に、そこで味方に繋げられれば、攻撃のスタートになり、それが正確なロングパスなら、一気にビッグチャンスへと転じる。それがひいては、守備機会を減らすことにも繋がるのだ。