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<世界バレーへ、独占インタビュー> 木村沙織 「世界一になれる戦術はこれしかない」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byTakahisa Hirano
posted2014/09/25 11:30
ポジションの概念を取り払う戦術に木村も戸惑った。
眞鍋監督が掲げた新戦術を端的にいうならば、常識を取り払い、従来のポジションの概念を外して、得点力のある選手を同時にコートに入れる。特に象徴的なのが、日本にとって積年の課題であった中央からの攻撃力を高めるために、本来であればミドルブロッカーが入る位置に、長岡望悠や石田瑞穂といった、機動力と攻撃力を備えたウィングスパイカーを配置したことだ。
とはいえ昨秋のワールドグランドチャンピオンズカップでも同様に、迫田さおりをミドルの位置に入れて臨んでいる。本来とは異なるポジションに選手を入れる布陣は、今夏のワールドグランプリが全く初めての挑戦ではないはずなのだが、入る選手が代われば、また1人1人の動きも変わる。
なかなか調子がつかめず、黒星ばかりが増え、それぞれが課題と向き合い模索する中、木村も苦しんでいた。
「自分の調子がイマイチ上がらなくて。この戦術は1人1人が自分の役割を果たして、ベストもしくはベスト以上の力を出すことによってできるものなので、調子が悪い選手がコートにいたら、戦術どころか、それ以前の問題。今までも『自分はブレちゃダメだ』と思ってきたけれど、今まで以上に、どんな時でも私は絶対崩れちゃいけないし、調子が悪い時があってはいけないんだ、と思い直した大会でした」
ファイナルラウンドで4連勝、銀メダルという成果。
予選ラウンドの6戦目、タイとの試合で待望の初勝利。コンビの精度や、得点の取り方、ブロックとレシーブの関係など課題は山積されていたが、待望の1勝目を手にしたことで、ようやく少し、靄が晴れる。
「もうこれで行くしか自分たちが世界一になれる戦術はないんだ、と吹っ切れました」
ファイナルラウンドは予選で敗れたロシア、トルコ、中国、さらにこれまで未対戦だったベルギーを相手に4連勝。最終日にブラジルに敗れはしたが、堂々の2位。優勝したブラジルのジョゼ・ギマラエス監督が「いい結果を残したということは、いい戦術だった、ということ」と言うように、予選の当初は苦しんだとはいえ、新戦術が1つの成果を得た、と見ることもできる。
では、実際にその中でプレーする木村は、新戦術をどう捉えているのか。
“全員バレー”ともとれるその形は、ワールドグランプリで垣間見えた。
まだ不完全であるがゆえ、大きな可能性を秘める新戦術で金メダルを――。
世界選手権で頂点を目指すために、必要とされる要素とは何か?
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