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中田翔の成長はここまでなのか?
「短い打者歴」というひとつの危惧。 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byHideki Sugiyama

posted2014/07/04 10:30

中田翔の成長はここまでなのか?「短い打者歴」というひとつの危惧。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

和製大砲の期待を背負い、WBCも日本代表として経験した中田翔。打者に専念してからはまだ6年、その経験の浅さは彼の野球人生にとって致命的なものなのだろうか……。

「大人になってからでは遅いのか」という危惧。

 中田はパワーばかりが注目されるが、じつは、とても器用な選手だ。大阪桐蔭の監督、西谷浩一が言う。

「ピッチャーをやっていた頃は、フィールディングとかクイックとか本当にうまかった。ものすごく研究熱心で、すぐに覚える。あの関心がバッティングに向けられれば、彼はとんでもないバッターになるんじゃないかと思うんですけどね」

 つまり中田が打者として飛躍するためには、投手への未練を完全に断ち切り、打者として生きていく覚悟さえ決まればいいのだと思っていた。

 バッティングの怖さを知ったということは、その証だと思った。

 だが先日、プロゴルファーに転向した元プロ野球選手の言葉を聞き、ひとつの危惧を抱いた。そのゴルファーは元投手なのだが、野球選手時代からゴルフの腕前はプロ並みだったという。それでもプロゴルファーとしては大成しなかった。

「もちろん、もっとできると思ってましたよ。でも、やっぱり大人になってからでは、もう遅いと思うことが何度もありましたね。野球は感覚でできるんです。ここに投げよう、こんなボールを投げようということは、考えないでもできた。でもゴルフで残り30ヤードを打とうとすると、あれこれ考えないとできない。そこはとても大きな差なんです。小さい頃からゴルフをやっていた選手は、瞬時に状況を判断し、30ヤードぐらい感覚で打てちゃう。そこの領域には、今からでは絶対に追いつけないんです」

何万本振っても追いつけない領域はあるのか。

 高校を卒業してから初めて真剣にバッティングと向き合った中田にも、真の意味で一流になるには、これから何千本、何万本振っても、追いつけない領域があるのだろうか。

 怖さを知り、精神的には一回りも二回りも成長した。だが、中田の日本人離れした身体能力をバッティングに生かし切れているかというと疑問が残る。

 昨年夏、中田本人も話していた。

「もっともっと打てるはず。10段階で言ったら、5ぐらいですかね。いや、まだ5も行ってないかな。自分がこういうバッターになりたいという理想とは、まだまだかけ離れてますよ」

 足りない5、あるいはそれ以上のもの。それが今から補える種類のものであるかどうかがわかるのは、これからである。

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