ブラジルW杯通信BACK NUMBER
32試合で94点、今大会は“面白い”!
W杯のトレンドを決めた3つの文脈。
posted2014/06/24 16:30
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph by
Getty Images
共に南半球の国、しかも同じ6月でも南アとブラジルはかなり気温が違う。4年前の南アでは、フリースやダウンジャケットが飛ぶように売れていた。だがブラジルの場合は、短パン+Tシャツ姿が基本になる。正確に気温を測ったわけではないが、去年コンフェデ杯が行なわれていた頃と比べても暑いような印象を受ける。
それは気温ばかりではない。試合の内容もしかりだ。ちょうど全64試合の半分を消化した時点で、総得点数は94点。観客が派手なゴールに沸く場面は予想されたよりもはるかに多かったし、試合そのものもエンターテイメント性に富むものが大半を占める。これを書いている数時間前も、ポルトガル対アメリカ戦が終わったばかり。ブラジル大会はW杯史上、指折りの面白い大会になっていると言っていい。
ブラジル大会に現れた、新たな時代のうねり。
では今回のW杯は、なぜこれほど壮観なゴールシーンや、手に汗握る試合が多いのか。
サッカーの楽園、ブラジルで開催されていることがもたらす文化的な影響、猛烈な暑さと湿気にもかかわらず、コンディション調整に失敗したチームが比較的少ないこと。この手の解説は、現地でもよく耳にする。
だが個人的には巨視的な要因――時代のうねりとも言うべき文脈でも、読み解くことができる気もする。
1つ目の文脈は、今シーズンのCLが与えた潜在的な影響だ。
もちろん各国の代表監督は、それぞれ独自のコンセプトとスケジュールに従ってチーム作りを行なう。CLを見て監督やコーチたちが真似をしたなどと考えるのは、あまりにも非現実的だ。
しかし今シーズンのCLは、戦術の一つのヒントも与えた。カウンターアタックの有用性である。今大会が面白いのは、単にゴールや波乱が多いからではない。ゴールが決まる過程そのものがスリリングだからだ。
実はCLが終わった時点で、ブラジル大会ではカウンターや、長めのパスを起点にしたスピーディーな攻撃が増えるのではないかと予想していたが、読み通りの流れになった。ベイルやファルカオ、リベリーが抜けた穴は、ファンペルシやロッベン、そして大会前はほとんど名前さえ知られていなかったような選手達が、きっちり埋めている。