ブラジルW杯通信BACK NUMBER
“強すぎた王者”に手放しの賞賛を。
スペイン、黄金の6年間の完全な終焉。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byGetty Images
posted2014/06/20 16:30
オランダ、チリに連敗しグループリーグ敗退が決まったスペイン代表。パスはつながっていたが、危険なエリアにするすると侵入していくスペインらしい攻撃はついに見られなかった。
コンフェデの敗戦をも糧にすると思っていたが……。
メンバーが変わってもその精度は衰えず、ユーロ2008制覇の立役者であるダビド・ビジャとフェルナンド・トーレスが衰えれば“ゼロトップ"システム”で対応し、ジョルディ・アルバやペドロら気鋭の新戦力の台頭によってチームの活性化も促してきた。絶対的な司令塔であるシャビは確かに年齢を重ねたが、34歳になった今でもチームの誰より走っている。技術にもコンビネーションにも衰えはない。2013年のコンフェデレーションズカップ決勝でブラジルに完敗を喫したことには少し驚いたが、それでもまた、彼らはあの敗戦をエネルギーに変えて堂々たる振る舞いでW杯連覇の偉業に挑むことができる。そう考えていた。
オランダ、チリの完璧なスペイン対策。
ただモウリーニョの言うとおり、オランダとチリのスペイン対策は完璧だったと言っていい。
ケビン・ストロートマンとラファエル・ファンデルファールトをケガで欠いたオランダは、中盤の構成力では他の強豪国に見劣りする。ボールゲームでスペインに勝てるはずもなく、指揮官のルイス・ファンハールは苦肉の策として3バックを選択した。
最終ラインを高く保ち、前線からの激しいプレスでパスの出どころを封じるのは、スペイン対策における定石である。彼らはさらに“緩やかなマンツーマン”を選択し、出どころだけでなくパスの受けどころも徹底的に潰しにかかった。すると時間とスペースを奪われたスペインはジタバタとミスを連発し、もろくもオランダの術中にハマって大量5失点を喫した。
チリの指揮官ホルヘ・サンパオリも、基本的にはこれと同じ考え方でスペインに挑んだ。圧倒的なハードワークによる激しいプレッシングスタイルは、元指揮官のマルセロ・ビエルサがこのチームに叩き込んだ真骨頂だ。チーム1位の走行距離を記録したのは、12.59kmのMFマルセロ・ディアス。これは、スペインで最も走ったダビド・シルバと比較して1km近くも多い。
サンパオリは、故障明けでコンディションが懸念されたアルトゥロ・ビダルをトップ下に起用。2トップのアレクシス・サンチェス、エドゥアルド・バルガスと形成するトライアングルは攻守の切り替えが極めて早く、激しいプレッシングでスペインのミスを誘発した。ボールを奪えずとも狙いどころを絞り、チーム全体が彼らの動きに呼応して球際に寄せる。狙いが定まっているからボールを奪った直後の距離感が近く、攻撃に転じた彼らはまるでスペインのような華麗なパスワークでゴールに迫った。