ブラジルW杯通信BACK NUMBER
時計の針を4年間戻してはいけない!
大久保嘉人が感じた“苛立ち”の理由。
posted2014/06/18 10:40
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Takuya Sugiyama
1-2でコートジボワールに敗れた後、大久保嘉人は、珍しくガッカリした表情でミックスゾーンに現われた。
大久保は、試合に負けてもそれほど表情が変わらないことが多い。だからこそ、この敗戦がただの1敗ではなかったことが窺えた。
「負けたのはもちろん悔しいけど、それ以上に自分たちの攻撃的なサッカーができなかった。メンバー入りしてから3試合やったけど、それとはまったく違う別のチームになっていた。それがショックというか、悔しいっていうか……」
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大久保は、メンバーに選ばれた時から、ザックが4年間かけて磨き上げてきたチームに大きな期待を寄せていた。
4年前、周囲の評価と裏腹に感じた歯がゆい思い。
というのも4年前の南アフリカ大会に、個人的には満足していないからだ。大会直前にチームを再編成し、岡田監督はアンカーを置いて守備的に戦うという結論を下した。
「あんなに守備に走り回ったことはなかった」というぐらい大久保はサイドをアップ&ダウンし、守備に奔走した。その守備がベースになり、チームはベスト16に進出。だが、大久保の中には、結果とは裏腹に「自分らしさを出せなかった」という悔しい思いが残った。帰国して称賛されても、攻撃で思い切り暴れることができなかったことが喉に棘のように引っ掛かっていた。
だがザッケローニ監督のもとブラジルW杯を目指してスタートし、アジア最終予選を破竹の勢いで勝ち上がっていった日本代表とその攻撃的なスタイルを見て、「あの中でプレーしたらおもしろいやろなぁ」という思いを抱いていた。「代表復帰」を本当に意識したのは父親の死がきっかけだったが、今の代表なら自分が活きるという感覚も、復帰への思いを加速させた要因のひとつだった。そして、大久保はついにブラジルW杯を戦う日本代表入りを果たした。