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元コロンビア代表の日系人がいた!
道工薫、90歳のサムライ蹴球人生。
text by
北澤豊雄Toyoo Kitazawa
photograph byToyoo Kitazawa
posted2014/06/09 10:30
コロンビアのバランキージャ市で現在も仕事を続けている道工氏。その眼差しは「サムライ」の文化を思わせる精悍さを湛えていた。
コロンビア代表チームのキープレイヤーは2人。
引退後も海軍に所属しながらアマチュアクラブの指導者になった。1960年にはコロンビア北部のアトランティコ県の選抜チームの監督になり、チームを優勝に導いた。
平行してバランキージャ市に住む日系人社会でも力を尽くした。道工の発案により「日本・コロンビア友好協会」が1985年に誕生。今日でもバランキージャ市の界隈には800人近くの日系人が暮らしている。その中心にいるのが道工であり、彼にインタビューしている最中にも事務所の電話は三度鳴った。いずれも日系人からの相談だという。ビザやパスポートの更新といった日本大使館が請け負う手続きの問題を始め、仕事の斡旋や日本への出稼ぎの要請、日本での滞在先の確保など、90歳になった今でも道工は精力的に仕事を続けている。さながらコロンビア北部に住む日系人のための駆け込み寺だ。
そんな道工は、日本戦を前に、コロンビア人選手のキーマンの名を2人上げた。
「コロンビア代表の10番を背負う司令塔、ハメス・ロドリゲスとFWのテオフィロ・グティエレスです。ハメスは視野が広く、ドリブルもパスもシュートもすべてが一級品です。一方のテオは私と同じバランキージャ市の育ちです。2年前にバランキージャ市のスポーツ栄誉賞の授賞式があり、テオと私も選ばれて会場で顔を合わせました。エースのファルカオが怪我を負っていますから、彼が代わりを務めるでしょう。彼のシュート力には注目です」
日本側のキーマンには本田圭佑の名を上げたが、ヨーロッパのサッカーはあまり見ないという。
最後に、元コロンビア代表のフットボーラーに、やぼなことを問うた。日本対コロンビアのスコアを予想して下さい、と。
「1-1の同点でしょうか」
そう言って、小さく笑ったのだった。