フットボール“新語録”BACK NUMBER
「手よりもすごいことを足でやる」
風間フロンターレが追求するもの。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byYusuke Nishizono
posted2014/05/26 10:30
FCソウルとのACLの決勝トーナメント1回戦では2戦合計スコア4-4となり、アウェーゴールの差で敗退した川崎フロンターレの風間八宏監督。
バルサにできず、フロンターレにできること。
しばしば誤解されるのが、風間監督がバルセロナを参考にしているのではないかということだ。確かに狭いエリアでショートパスの交換を行なうなど、共通点は多く、大まかにくくれば方向性は同じである。
だが、あくまで方向性が同じなだけであって、風間監督はバルサをコピーする気などまったくない。
風間監督は言う。
「いつも勘違いされちゃうけど、私たちはバルサのサッカーをやっているわけではありません。なぜなら、シャビにしかできないこと、メッシにしかできないことがあるからです。
でも逆にフロンターレの選手にしかできないことがある。今フロンターレでは、ヨーロッパの選手たちよりももっと緻密なサッカーに挑戦している。日本人選手は大きさや強さでは劣るかもしれない。でも、正確な“物”を作ることはこちらの方が長けている。緻密さこそが、私たちが勝負できるところだと考えています」
バルサのズレは15cm、フロンターレが目指す5cm。
その緻密さを計るうえで、クライフの言葉が絶好のバロメーターになる。
スペインリーグの最終節でバルセロナがアトレティコ・マドリーと引き分けたとき、クライフは「メッシへのパスが15cmずれていたために、バルサは機能しなかった」と分析した。15cmのズレが、バルサがリーグ優勝を逃す敗因になった。
それに対して風間監督は「5cmのずれすらもなくしたい」と考えている。
「フロンターレの場合、そこが勝負です。サッカーは足でやるスポーツということで、多くの人が技術の追求を諦めてしまっている。でも、そうじゃない。私は『足だからこそ手よりもすごいことができる』と考えています。
攻撃のとき、それぞれのプレーに0.5秒、2秒、3秒かかっていたら勝負にならない。でも0.5秒、0.5秒、0.5秒という速さでプレーできれば、大きな武器になる。実際、フロンターレでゴールが決まるときは、それがピッチで起きています」