攻守のボーダーレス化がチームの守備力を高める。

　三つ目の理由は、チームのディフェンスにおける作業分担の変化だ。

　単純にいえば、守備の局面でもセンターバックだけがクローズアップされる場面は少なくなってきているということだ。

　それを可能にしているのが、前線や中盤におけるフォアプレスやフォアチェックの浸透である。センターバックが攻撃の組み立てに加担するようになったのとパラレルに、逆にフォワードやミッドフィルダーが守備を分担するようになったと捉えてもいい。

　古典的なセンターバックの消滅、すなわち攻撃にもかかわる新たなセンターバックの登場は、チームの守備力低下を必ずしも意味しない。それどころか、むしろユニットとしての守備力は高まりつつさえある。

　今日の欧州サッカー界では、「得点力の高いチームのほうが失点も少ない」という傾向がはっきりと現れてきている。たとえば今シーズンのプレミア、リーガ、ブンデス。マンU、バルサ、ドルトムントといった首位のチームは、いずれも総得点数においてトップに立っているだけでなく、喫した失点も各リーグで最も少ない（1月14日時点）。これは守備が多少緩くても、圧倒的な攻撃力で得失点差と勝ち点を稼ぐ方式とは根本的に異なる。

日本サッカー界でスターとなる新しいタイプのCBは誰だ？

　サッカーでは「攻撃のための守備」、「守備のための攻撃」という言葉がよく使われる。倣って言うならば、古典的なセンターバックの消滅と新たなセンターバック像の登場は、「攻撃のための守備『陣』」「守備のための攻撃『陣』」という考え方が定着しつつある一つの現れなのである。

　それにしてもセンターバックの新星登場が待ち遠しい。

　完璧な守備でピンチを救ったかと思うと、次の瞬間には疾風のごとくゴール前に駆け上がってチームに勝利をもたらす。そんな千両役者が現れてくれたなら、なけなしの金をはたいても試合を見に行こうという気になるというものだ。

　結局、アジアカップでは最後の最後までセンターバックが頭痛の種になってしまった。

　闘莉王は新たなタイプのセンターバックに分類されるかもしれないが、彼も29歳。日本代表としては、吉田麻也がアジアカップで得た教訓と経験を糧に大きく成長するのを願いつつ、ザッケローニが「守備の国から来た監督」としての本領を、若手の抜擢や育成においても発揮してくれつのを期待するといったところだろうか。