ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
井上尚弥、6戦目で最速世界獲得!
王者が噛ませ犬に見えた“力の差”。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byAP/AFLO
posted2014/04/07 11:15
試合後、腫れ上がったエルナンデスの顔とは対照的に、井上尚弥の顔は綺麗なままだった。無傷で世界を獲った怪物はどこまで上るのだろうか。
「具志堅さんの持つ13回の防衛記録を目指したい」
日本が世界4団体に加盟し、チャンピオンの数も増えた時代において、世界チャンピオンはかつてのような到達点ではなく、より輝かしい、多くのファンに認められる本物の王者になるための出発点という位置になりつつある。プロ6戦目で世界タイトルを獲得した20歳も、これがゴールではなく、新たなスタートラインだと自覚している。
「この階級になるかわからないけど、具志堅さんの持つ13回の防衛記録を目指したい」
高みを目指すボクサーは、強いライバルを求めて盛んにクラスを変える時代だから、井上がどのような記録を達成するかは未知数だ。大事なのは井上の口にする「強い選手と試合する」ことであり、ひいては「応援してもらえるようなチャンピオンになる」ことであろう。
ADVERTISEMENT
幸い大橋会長は思い切ったマッチメークを得意とするプロモーターだ。井岡一翔(井岡ジム)と八重樫東(大橋ジム)の2団体統一戦を実現させ、今回の試合前には、無敵のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)を八重樫にぶつけるビッグプランを発表して関係者を驚かせた。
その大橋会長は言う。「尚弥の力はまだこんなもんじゃない。スパーリングではもっと強い。やっぱり怪物ですよ」。覚醒した怪物はこれからどんな試合を見せてくれるのだろうか。夢と期待を膨らませた大田区総合体育館の夜だった。