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米国とロシアのジャッジが裏取引?
五輪の度に湧くフィギュア界の疑惑。 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byShinya Mano/JMPA

posted2014/02/13 12:05

米国とロシアのジャッジが裏取引?五輪の度に湧くフィギュア界の疑惑。<Number Web> photograph by Shinya Mano/JMPA

“皇帝”プルシェンコの復活、15歳のリプニツカヤの大活躍と、話題豊富にして実力の裏づけもしっかりあったロシア団体の金メダルだったが……。

 2月9日、ロシアが団体戦で金メダルを獲得したが、その前日に採点にともなう不穏な噂が報道された。

 2月8日、フランスのスポーツ新聞レキップ紙が、「米国とロシアのジャッジが、フィギュアスケートの裏取引をしている」という内容の記事を掲載。それによると、ロシアは米国のアイスダンサー、デイビス&ホワイトの金メダル獲得に協力し、その見返りとして米国はロシアの団体戦金メダルと、ロシアのペア、ヴォロサジャル&トランコフの金メダル獲得に協力するという密約を交わしたとされている。情報は、あるロシア人コーチからレキップ紙の記者にもたらされたものだという。

ISUは「根拠なし」、USFSAも全面否定。

 国際スケート連盟(ISU)のプレス担当者はすぐさま、「証拠も裏付けもないことで、ISUは調査の必要はなしと判断した」と声明を出した。米国フィギュアスケート連盟(USFSA)も「事実無根」ときっぱり否定した。

 団体戦では選手たちの演技内容を見る限り、ロシアの優勝に納得できない理由は見当たらなかった。2月11日に優勝したペアのヴォロサジャル&トランコフも、五輪王者に相応しい滑りであったことは、誰も異存ないだろう。

 そもそも彼らもデイビス&ホワイトも、ともに現世界チャンピオンで、金メダル最優秀候補だった。特にデイビス&ホワイトは、今シーズン圧倒的な強さを誇り、不敗を保ってきた。

「なぜ米国が危険をおかしてまで、デイビス&ホワイトのために裏取引をしなくてはならないのか。彼らはどのみち、間違いなく勝つでしょう」とロシアのスポルトエクスプレス紙の記者は口にした。カナダのベテラン記者は、「不器用な米国がそのような取引をするほど、政治的に長けているとはとても信じられない」と感想をもらす。このようにプレス関係者の間でのレキップ紙の記事に対する意見は、概ね否定的だった。

「関係者の話は確かなもの」と執筆記者。

 だが執筆したセリーヌ・ノニは、私にこう語った。

「情報源が匿名だから、皆これは単なる噂だと思っている。でも私はロステルコム杯の時にこの話を耳にして、欧州選手権では別のロシア関係者から再び耳にした。根拠のない噂ではありません」

 ノ二は1992年アルベールビル五輪からフィギュアスケートをレポートしてきたベテラン記者で、過去にも何度か大きなスクープ報道をしている。そのひとつは、バンクーバー五輪直前に米国の古株ジャッジ、ジョセフ・インマンが五輪に派遣されるジャッジも含む知り合いのスケート関係者、数十人にEメールを送りつけたというものだった。その内容は「プルシェンコ本人でさえ入っていないというトランジションに、なぜあんな高い評価がつくのか」というものであったことを、インマン本人も後に認めている。

 このメールが判定に直接的な影響を与えたのかどうかは、はっきりと断定できない。個人的にはインマンのEメールがなければ、バンクーバーでプルシェンコは2個目の五輪金メダルを獲得していただろうと思う。だが彼のメールはルール違反とは見なされず、ISU の内部で問題視されなかった。

【次ページ】 五輪につきものの「ジャッジ疑惑」。

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