ソチ五輪EXPRESSBACK NUMBER
「龍一君の手」が決めたペアの縁。
高橋成美&木原龍一、奇跡の1年。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byShinya Mano/JMPA
posted2014/02/12 12:20
団体戦の直後、「60点くらいの出来です。もっとちゃんとできるのに、本番で力を出し切れないのは、まだまだということです」とコメントし、次回の五輪挑戦に意欲を新たにしていた木原龍一。
団体戦のみのソチ五輪出場もかなったが……。
一方、リード姉弟は実力を発揮して、同大会でアイスダンスの出場枠を獲得。日本が五輪団体戦に出場すれば、“団体戦のみ”の出場が出来ることが分かったが、心中複雑なまま日々が過ぎた。木原は言う。
「やはりネーベルホルン杯の後は、気持ちの回復にちょっと時間がかかりました。でも世界選手権があるのでそこを目指そうという話をして、五輪の団体戦には無理に期待せず、毎試合を目標にすることにしました」
そこからの2人は、試合を重ねるごとに息が合っていった。
「今までシングルだと、僕は練習に対する姿勢が今より適当だったなと思いました。朝練でギリギリに行って、アップをしないでケガをしても自己責任でした。でも今は、僕が転んだら成美ちゃんがケガをする。責任感が変わりました」
「私の方が先輩という立場ではなくて、2人で一緒に成長してるって感じです。技の確率もどんどん上がっていて、リフトも安心して身体を任せています」
息が合う最高のペアであることを、2人の言葉が示していた。
そして12月の上旬、朗報は訪れた。
不思議な縁で、ソチ五輪個人戦出場の朗報が!!
GPファイナル後に団体戦の出場が決定、さらにエストニアのペアが国籍を取得できず棄権したことで、1月上旬には個人戦の出場権まで回ってきたのだ。どんなに夢見ても出場がかなわない選手が山ほどいる五輪。不思議な縁の力が、2人にはあった。
五輪代表の記者会見で、木原は「1年前はこの場にいることを想像しませんでした」と万感の思いをこめて言った。
迎えたソチの夢舞台。団体戦のショートは46.56点で10組中8位、フリーは86.33点で5組中5位で、チーム日本に貢献した。
「練習よりも身体が動いてよかったです。自分たちの演技に集中できましたし、五輪だからという緊張感も思ったほど無かったです。個人戦では、もう少し2人の力を信じて、思い切り挑戦したいです」と高橋。