野球クロスロードBACK NUMBER
浅村栄斗、打点王の先に見据える物。
叱責が「レオの天才肌」を強くした。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/02/04 10:45
昨年はチームで2位となる14盗塁を成功させた浅村栄斗。伊原新監督の下で、昨年以上の成績を残すことができるか。
'12年序盤戦の絶不調、二軍落ちで考え方を改めた。
心の隙は、行動にも表れていた。'12年の春季キャンプで足を痛め下半身を鍛えることができなかったが、万全な状態で開幕を迎えられなくても危機感はなかった。
多分、大丈夫やろ――。若手の多くは、己の才能を多少なりとも過信しているものだ。だが、そこには必ず限界が訪れる。
この年の浅村がそうだった。
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開幕スタメンの座を掴みながら序盤から大ブレーキ。5月には二軍に落とされた。そこで初めて、自分の才能を疑い、悟ったのだ。
「『去年以上の成績を残さないといけない』とは思っていたんですけど、今まで通りやっていたから全然ダメで。そこからですね、意識的に『今の自分は何をやらないといけないのか?』と行動するようになったのは」
ファームではキャンプ中に鍛えられなかった下半身を中心に、一から体を作りなおした。それでも、この年2割4分5厘、7本塁打、37打点と前年より数字を落としたのは、それまで才能を過信していたことによる報いだったのかもしれない。
渡辺元監督には「みんなの前で怒られた」ことも。
自らの過ちに気づいたからこそ、'13年の飛躍に繋がったことは言うまでもない。だが、それが全てではない。渡辺久信。当時の指揮官の存在こそ大きな比重を占めていると言っていいだろう。
浅村は、その事実を苦笑交じりで首肯する。
「みんなの目の前で怒られたりとか……。僕、チームのなかでも特別っていうか、結構、怒られていた方なんで」
とりわけ守備、ショートでのミスは徹底的に糾弾された。「お前の逆シングルは1年目から全然成長してない」。ショートとしての動きをこなしていなければ、どんなに些細なことでも指摘される。
'13年5月28日のDeNA戦。守備のミスを引きずり、3回表の第1打席であっさりと三振した浅村は、裏の守備からベンチに下がった。懲罰交代。浅村は、指揮官から容赦なく切り捨てられたのだ。
この試合について、「集中力がなかったわけではないんですけど……」とぽつりと呟きながら、浅村は心境を吐露する。