ブックソムリエ ~必読!オールタイムベスト~BACK NUMBER
潔癖にして赤裸々。
アスリートによる最良の一冊。
~『マラソンの青春』を読む~
text by
馬立勝Masaru Madate
photograph byRyo Suzuki
posted2014/02/03 06:10
『マラソンの青春』君原健二/高橋進著 時事通信社 現在絶版(1975年刊)
本書は五輪3大会、東京(8位)、メキシコ(2位)、ミュンヘン(5位)に連続出場した名マラソン走者の現役時代の回顧録。1973年に32歳で競技生活から身を引いた2年後に出版された。日本のアスリートの手になる本としては異色で、最良の一冊だ。
異色とはこんなところ。ミュンヘン五輪を前にした北海道合宿での日記の一節。
「アマチュア・スポーツは余暇にすべきものである。それが日本代表というユニフォームを着せられて踊らされている。犠牲、忍耐がいかに立派な美徳であるかのように思いこませている。俺は演技者でも国の手先でもない。俺は夫であり親である。夫として親としての役目も果たしきらないものが、なんで誉れなどでありえようか」