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セリエAのジンクスを破壊するナポリ。
“スペイン化”でカテナチオに挑む。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2014/01/15 10:40

セリエAのジンクスを破壊するナポリ。“スペイン化”でカテナチオに挑む。<Number Web> photograph by AFLO

インテル長友がヘッドでクリアしたボールをダイレクトボレーでゴールに突き刺し、歓喜するイグアイン(右)。長友の今季4点目も生まれたが、試合は4-2でナポリが勝利した。

仇敵相手に指揮官が見せた後半戦への切り替え。

 CL敗退から4日後、ベニテスは仇敵インテルをサン・パオロに迎えた。4年前に指揮を執っていた古巣は、クラブW杯を含む2つのタイトルを勝ち取り、CL決勝トーナメント進出を決めていたベニテスを非情にも解任した。

 待ち続けた意趣返しの好機に、ベニテスはボールポゼッションを捨て、これまで使わなかったカウンター攻撃を選手たちへ命じた。攻めるスピードをさらに上げ、チームの意識に勝敗への冷徹なこだわりを加えた。

 イグアインが前半9分に先制ゴールを突き刺すと、ナポリは終始ゲームをコントロール。FWメルテンス、MFジェマイリ、そしてMFカジェホンが次々と相手ゴールを陥れ、4-2の大勝を納め、ナポリは再び疾走し始めた。リベンジを成就したベニテスは、試合中一度たりとも笑うことはなかった。

「我々はCLから去ったが、胸を張って誇れる敗退だった。だからこそ、後半戦への迅速な切り替えをチームに期待していた。今はユーベとローマが我々の前を走っている。しかし、カンピオナートは耐久レースだよ」

さらなるスペイン化に向け、新たなターゲットを。

 デラウレンティス会長は、昨夏に投じた150億円に続いて、この冬の獲得資金として40億円以上を用意している。かつてELを軽視する発言で物議を醸した名物会長だが、欧州タイトルへ欲が出てきたらしく、クリスマス前には「他のイタリア勢(ユベントス、フィオレンティーナ、ラツィオ)と競い合って、是非とも優勝したい。スクデットもあきらめんぞ」と怪気炎をあげた。

 ナポリのスペイン化は、今冬の移籍市場でさらに進む気配だ。指揮官が望むMFマタ(チェルシー)かMFマスチェラーノ(バルセロナ)の獲得が実現すれば、最前線からゴールマウスまであらゆるポジションでのオールスペイン路線が加速する。

 一方で、スペイン流4バックに馴染めなかった地元出身の主将カンナバーロは完全に出番を失い、スペイン選手たちとは逆に、故郷を去る決意を固めた。

 セリエAには長く“スペイン人選手は成功できない”というジンクスがあった。'01年に、ラツィオが890億リラ(約50億円)という大枚を払ってバレンシアから獲得したMFメンディエタは20試合無得点という散々な出来に終わり、今でも最悪の補強失敗例として記憶されている。

【次ページ】 「ナポリより熱くなれる場所を探すのは難しい」

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