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8試合で7ゴール、1トップが天職か。
「シンジ」を岡崎慎司の代名詞に。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2013/12/27 10:30
岡崎はハンブルガー戦で2ゴールを決め、これはシーズン3度目の1試合複数得点。欧州でプレーする日本人としては初の記録だ。『ビルト』紙はこの活躍ぶりを「オカザキの獲得は掘り出しものだった!」と報じた。
香川が記録した13ゴールが日本人の記録。
ハンブルガーSV戦から2日後、ビルト紙の「マインツ・ヴィスバーデン」版は、タイトルを日本語のアルファベットで表記した「ARIGATO, OKAZAKI-SAN!」という岡崎の記事を掲載した。記事は、こんな書き出しで始まる。
「日本において、彼はすでにスーパースターだ(73試合で32ゴールを決めている)」
※実はこれはビルト紙の誤りで、実際は72試合で36ゴール
記事を書いたドイツ人記者の常識からすれば、現役の代表選手最多のゴール数を決めている岡崎が日本でスーパースターではないことはありえないと考えたのも無理はない。
だが、これは、正確ではない。
現時点での岡崎の日本での評価は、多くの人に知られている選手であるがスーパースターではない、というものだろう。
'10-'11シーズンの前半戦、ドルトムントで17試合に出場して8ゴールを決めた香川はブンデスリーガ公式サイトから前半戦のMVPに選ばれた。
'11-'12シーズンは31試合に出場して13ゴール。なお、このシーズンに決めた13ゴールは、ヨーロッパ主要国の1部リーグで日本人が決めた最多ゴールとなっている。
マインツでゴールを決める難しさはいかほどか。
岡崎は今シーズンの前半戦で16試合に出場して8ゴールだ。このペースでゴールを決め続ければ、シーズン終了時には日本人最多となる15~16ゴールを決める計算になる。
岡崎の所属するマインツは所属選手の総評価額がリーグで下から3番目のスモールクラブであることも忘れてはいけない。香川の記録はいずれもドルトムントが優勝したシーズンでのものだ。そういうクラブでレギュラーとして試合に出続けることは難しいわけで、香川の記録の価値が落ちることはない。ただ……。マインツというクラブでゴールを決め続ける難しさは、いかほどのものか。
ドルトムントにいた2年間、香川は日本代表の10番を背負う選手ではあったが、それでもドイツでの人気の方が日本でのそれをはるかに上回っていた。当時、香川本人もそれを自覚して、こう語っていた。
「日本ではたぶん、(スーパースターになるのは)無理だもん。世界はサッカーで結果を残せばすごく注目される。オレ、ドイツではすごい、自信を得た」
その後、香川はドイツで得た実績と自信を手にイングランドのマンチェスター・ユナイテッドへと移籍して、日本でもスターの名をほしいままにしている。
岡崎が「シンジ・カガワ?」と声をかけられることはもう、ないだろう。そしてマインツでこのプレーを続ければ、2014年は岡崎がスターとして認知される年になるかもしれない。