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8試合で7ゴール、1トップが天職か。
「シンジ」を岡崎慎司の代名詞に。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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posted2013/12/27 10:30

8試合で7ゴール、1トップが天職か。「シンジ」を岡崎慎司の代名詞に。<Number Web> photograph by AFLO

岡崎はハンブルガー戦で2ゴールを決め、これはシーズン3度目の1試合複数得点。欧州でプレーする日本人としては初の記録だ。『ビルト』紙はこの活躍ぶりを「オカザキの獲得は掘り出しものだった!」と報じた。

トゥヘルが、GMに送り続けたSMSの内容とは。

 ぎりぎりのところで勝負する。だから、岡崎がほんの少しだけオフサイドラインを出ていることもあるし、オフサイドラインのほんの少しだけ手前にいたのを副審が見逃すこともある。ただ、彼は足が速い選手ではないからこそ、ギリギリのタイミングを狙うのだ。

 前半戦の最後の試合、ハンブルガーSV戦での2ゴールはいずれもDFラインの裏に出て決めたものだった。そう、ギリギリのタイミングで抜け出したものだ。

 キッカー誌は、この週のMVP、マン・オブ・ザ・マッチ、ベストイレブンに岡崎を選び、選手への採点では最高評価となる1点をつけた。

 同誌には昨夏に行なわれたコンフェデレーションズカップの期間中のとあるエピソードが掲載されていた。イタリア戦とメキシコ戦で1ゴールずつ岡崎が決めると、トゥヘル監督は、選手獲得の責任者であるハイデルGMに毎日のように同じようなSMS(携帯のメッセージ)を送り続けていたという。

「誰か(他のクラブの関係者)がオカザキのプレーを目の当たりにしたなら、(移籍金が高騰して資金力の恵まれない)うちのクラブに来てくれなくなるぞ!」

 トゥヘル監督の熱意が通じたのか、コンフェデレーションズカップの日本代表のすべての試合が終わった直後に岡崎のマインツへの移籍が正式に決まった。そして、今の活躍がある。

「これまではあまり、欲を出すことはなかった」

 27歳にしてサッカーをする喜びを隠そうともしない岡崎は、自らの気持ちの変化にも気づいている。ハンブルガーSVとの試合の2日前の練習場でのこと。チームの練習が終わったあと、かつて鹿島などJリーグの複数クラブでプレーした経験のあるMFのパク・チュホと汗を流した。

 第15節のニュルンベルク戦でも自らのゴールをアシストしてくれた韓国人のレフティーとの居残り練習は、マインツに来てから日課となっている。夕方を過ぎて闇に包まれた練習場で岡崎はこう話しだした。

「みんながさらに裏に抜ける自分のことを見てくれれば、もっとチャンスがあるなと感じるんです。やっぱり、欲が出てきますよね……」

 そして、穏やかな表情でこう付け加えた。

「これまではあまりなかったんです、自分がこうやって欲を出すことはね。周りからは『オレのことを見てパスをくれ』と言われることもありますけど、今はそれ以上に自分は『こっちを見てくれよ!』って話していますからね。もっと自分を見てくれたらなぁ……と。欲が、出ますねぇ」

【次ページ】 香川が記録した13ゴールが日本人の記録。

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