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本田圭佑、夢を叶えたミランの10番。
カカが、バロテッリが彼を待っている。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byPICS UNITED/AFLO
posted2013/12/12 13:00
「Wカップで有名になって、ぼくは外国から呼ばれてヨーロッパのセリエAに入団します。そしてレギュラーになって10番で活躍します」という小学校の卒業文集の夢を、本当に実現した本田。
「本田はローコスト、だがトッププレーヤーだ」
昨日の本田獲得公表についても、イタリアSKYが速報した後、クラブHPの発表を受け、電波・新聞・Webを問わず、あらゆる媒体が次々に速報を出した。
伊紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、Web版で「本田はローコスト、だがトッププレーヤーだ」と報じた。記事のコメント欄には好意的な声が並んだが、「イタリアで何の実績もない人間に10番を与えるのか」といった厳しい意見も目に付いた。
“ミランの10番”が持つ意味は相当に重い。
名将サッキの黄金時代にオランダトリオを操ったフリット。'90年代に観る者を魅了したのは、旧ユーゴスラビアが生んだ天才2人、ボバンとサビチェビッチだった。
クラシカルなトップ下として愛されたルイ・コスタが'06年に故郷ポルトガルへ去った後、10番を受け継いだセードルフは万能の攻撃型MFとしてアンチェロッティ時代に欠かせない主力だった。
'80年代以降のみを振り返ってみても、ミランの10番を背負ってきたのは、サッカー史に名を残すレジェンド・プレーヤーたちばかりだ。本田は、実力で彼らの後継者であることを証明しなければならない。
カカが、バロテッリが、本田のアシストを待っている。
11日夜、ミランはアヤックス相手に苦戦した末、CL決勝トーナメント進出を決めた。試合後、アッレグリ監督は「本田が必ずチームの戦力になってくれる」と語り、現在9位と低迷しているセリエAでの巻き返しの起爆剤として、熱い期待を寄せている。
CSKAでCLグループリーグに出場した本田は、規定によって、今季の決勝トーナメントに出場できない。本田の戦場は、セリエAと国内カップ戦のコッパイタリアになる。
登録手続きの問題で、アタランタとの1月6日の年明け初戦でプレーできるかどうかは微妙だが、12日の次節サッスオーロ戦でのデビューが濃厚だ。
三浦知良がセリエA初の日本人選手として、ジェノアへ移籍してから20年近くになろうとしている。
'94年夏、開幕戦の相手は、前シーズンにセリエAとCLの2冠を制していたミランだった。当時の主将バレージと衝突して、カズの鼻骨が折られたとき、深夜の衛星中継を見ていた日本のサッカーファンの心も折れた。
ロッソネーロ(赤・黒)のユニフォームは、まさしく世界最強の象徴だった。
2014年、名門再建の切り札として、W杯優勝4度を誇る伝統国に、いよいよ本田が降り立つ。
カカが、バロテッリが、本田のアシストを待っている。サンシーロで雄叫びを上げる本田の姿が見られるのはもうすぐだ。