濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
K-1スタイルがキックを圧倒!!
Krush初代王座決定トーナメント。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakao Masaki
posted2010/12/20 10:30
60kg級、初代王座決定トーナメント1回戦。石川直生は3R判定2-0で卜部弘嵩に敗れ、がっくりと肩を落としリングに立ちすくんだ。これで石川は直近の試合3連敗となった
K-1ルールを導入した格闘技イベント『Krush』が、設立3年目にして初代王者決定トーナメントをスタートさせた。12月12日の後楽園ホール大会では55kg級、60kg級の1回戦が行なわれ、それぞれのベスト4が決定している。
出場選手16人の平均年齢は23.6歳と若い。勝者8人の年齢を平均すると、21.7歳とさらに下がる。K-1甲子園やKrushで育った若い選手たちにチャンスが与えられ、彼らがその期待に応えた結果だ。
55kg級では、18歳の日下部竜也が30歳の寺戸伸近を判定3-0で下した。驚かされたのは結果だけではなく、日下部が試合中に見せた落ち着き払った闘いぶりである。
1ラウンド、得意の右ストレートで先にダウンを奪ったのは寺戸だった。だが、日下部はそのことで慌て、ペースを乱すようなことがまったくなかったのだ。
距離を取ってのサークリングと距離を詰めての打ち合いを巧みに使い分け、パンチをフェイントにしながらヒザ蹴りを突き刺し、ボディにダメージを与えたところで顔面にパンチをまとめてみせる。
最終的に奪ったダウンは三つ。パンチ連打からの左ミドル、左フック、バックキックと違う技で倒していることからも、日下部がいかに多彩な技を持ち、“攻め所”を瞬時に判断していたかが分かる。
彼は前回の試合でシュートボクシングのスーパーバンタム級タイトルを獲得し、今回闘った寺戸は全日本キック、M-1、RISEと3本のベルトを保持する選手。寺戸との試合はノンタイトル戦だが、2試合でベルト4本分の勝利を得たことになる。
繰り返すが、彼はまだキャリア11戦目の18歳だ。
まぐれとは言わせない、卜部弘嵩の圧倒的な実力。
60kg級でも4試合中3試合で若いほうの選手が勝利を収めた。
メインイベントでは31歳の石川直生と21歳の卜部弘嵩が対戦。
かつて全日本キックで“四天王”の一人として活躍し、今回は連敗脱出を狙う石川に対して、卜部は公開練習で「石川選手が復活するより、僕が世代交代するほうがドラマチックでしょう」とコメント。その言葉どおり、3倍以上のキャリアを持つ相手と堂々と渡り合ってみせた。
蹴りを主武器とする石川が左ミドル、右ローを散らしながらハイキックを狙ってくるところへ、卜部は要所でパンチを返していく。
ボディにも足にもダメージがあったはずだが、最後の一撃だけは許さない。そして2ラウンド、飛びヒザ蹴りから着地したところへ右ストレートを合わせて石川をマットにしゃがみこませた。最終3ラウンドも冷静にパンチを狙った卜部に対し、石川は強引にヒザを連打するだけ。