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1785日ぶり勝利の“新生”片山晋呉。
オーガスタへ忘れ物を取りに行く。 

text by

桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byKYODO

posted2013/10/09 11:00

1785日ぶり勝利の“新生”片山晋呉。オーガスタへ忘れ物を取りに行く。<Number Web> photograph by KYODO

2008年11月の三井住友VISA太平洋マスターズ以来の優勝となった片山晋呉は「自分の技術が発揮できたので、これからも28勝、29勝と重ねたい」と語った。

落とした財布に入れていた、宝物とは。

 優れた着眼点で、万人よりも一歩先のストーリーを描き、人知れずその筋書きをたどる。それこそが、プロの世界を生き抜いてきた片山の戦略だった。

 ツアー通算30勝、そして20代、30代に続く40代での賞金王戴冠……今後の目標は数多い。そしてそのひとつには、再びマスターズの舞台でプレーする自身の姿もある。

 思い出されるのは、待望の優勝を飾る1カ月前の8月末、福岡で行なわれたVanaH杯KBCオーガスタでのことだ。ラウンド後の片山は報道陣を見つけるなり、自ら囲み取材を受けたいと申し出てきた。聞けば「実は財布を失くしてしまって……タクシーで落としたみたい。警察に届けを出したけれど、連絡が無い」と言い、メディアを通じて世間に“被害”を呼びかける目論見だった。

「現金とか保険証なんかも入っていたけど、それはもう諦めた。でもマスターズの週だけ、選手が貰えて、使えるクレジットカードみたいのがあるんだよ。面白いから(財布の中に)持っていた」と記念の宝物を失ったことに落胆した。

 財布はまだ、戻ってきていない。でもだから、もう一度オーガスタに新しいカードを取りに行く――。今思えばあのやりとりも、片山が描く次なるストーリーの用意周到な伏線だったのかもしれない。

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