青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
金、石川、池田の壮絶な賞金王争い。
歴史に残る、その死闘のすべて。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byYusuke Nakanishi/AFLO SPORT
posted2010/12/06 12:15
彼らは自分に与えられた役割を理解し、それぞれの責任を背負って最後の決戦に臨んでいた。だからこそ、戦いは熱を帯びた。
賞金ランク上位からキム・キョンテ(金庚泰)、石川遼、池田勇太の3人が賞金王の可能性を残して迎えた日本シリーズJTカップ。
今季最終戦で賞金王の栄冠を手にしたのは、韓国人選手で初めて、外国人選手としては23年ぶりのタイトル獲得となるキム・キョンテだった。
2年連続の賞金王のためには優勝が最低条件だった石川は7位に敗れて夢はついえた。
「ゴルフファンが日本に何人いるか分からないけど、そのひとりひとりに感想を聞きたいぐらいです。自分はこれでよかったのかどうか」
今年も日本のゴルフ界を牽引し続けて、世界4大メジャーのすべてに出場した。
中日クラウンズでの58といったセンセーショナルな話題も振りまきつつ、国内3勝を挙げて最終戦まで賞金王争いをもつれさせた。それは十分な活躍だったはずである。賞金王を逃したとはいえ、最終日最終ホールのバーディーにねぎらいと称賛の大きな拍手を送られたことからも明らかだ。
それでも悔恨の思いが募る。
2日目に優勝戦線へ復帰し、ミラクルを見せてくれた石川。
「2年連続の賞金王を期待してくれていた方もいたと思う。僕の中では期待に応えられなかったという悔しい部分がある。これだけ期待されて、なんで初日にああいうプレーになったのか。終わったことなのでどうしようもないことだけど……」
金、池田と同組で回った初日は力んだ様子も明らかで、76を叩いてまさかの最下位に沈んだ。痛すぎる出遅れだ。しかし、そのつまずきを2日目のドラマに変えてしまうところが石川の真骨頂だった。
トップスタートの石川は無風の午前中のうちに多くのホールを消化して、面白いようにスコアを伸ばしていく。風がないからといって誰もが同じようにバーディーラッシュをかけられるわけではない。ラウンド終盤になると上位陣と共に石川も強風にさらされたが、それでも62をマークして6位に浮上するほど遮二無二スコアを伸ばした。初日の出遅れが嘘のように、奇跡的に優勝戦線にカムバックしたのだった。