日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
川島永嗣の絶対政権に挑む者あり。
最後方のゲームメーカー、西川周作。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/09/18 10:30
グアテマラ戦では90分間ゴールマウスを守り、6月11日のイラク戦以来となる完封勝利をもたらした西川周作。GKのレギュラー交代はいつだって突然に起こるのだ。
僕のところで2人かいくぐれば、チャンスになる。
後日、西川にこのシーンについて尋ねると、彼はこう振り返った。
「あのパスは狙っていました。(サンフレッチェ)広島でずっとやってきているプレーでもある。僕がつなぐ意識を持ってプレーしているのはみんな分かってくれていることだし、だからこそヤットさん(遠藤)があのタイミングで、(相手2人の)間に入ってくれた。僕のところで相手2人をかいくぐれると、チャンスになると思ったので。
ああやって最後にはクロスまで行くことができたし、自分たちのコーナーキックにすることができた。もしチャンスがあればこういったプレーを出したいと、気持ちのなかで準備していました」
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これまで出場機会に恵まれずとも、腐ることなく努力してきた成果が出たワンプレーだと言える。
吉田や遠藤、この日は先発から外れた今野泰幸にも、西川はピッチ内外でコミュニケーションを取り、イメージを共有してきた。
以心伝心は1日で成るものではない。遠藤が西川からパスを受けようとし、吉田、長友がその後のつなぎを意識する。積み上げてきたものが、あの1本のパスに凝縮されていたように思う。
自分がゲームメーカーだという意識。
西川にとって、コンフェデ杯の経験も大きかった。
試合に出たわけではない。ただ、世界を体験できずとも、ベンチからチームを支えるとともに熱い視線をピッチに向けていた。特に印象に残ったのが、ブラジルのゴールマウスを守るジュリオ・セザルのプレーだったという。
「敢えて相手を引き出しておいてからパスを出すそのタイミングであったり、駆け引きを見ることができたのは、かなりプラスになりました。世界のGKは相手にプレッシャーをかけられても、落ち着いていいパスを出せる。そういう意味でも、自分にとってあの大会で(世界の選手を)しっかり見ることができたのは良かった。
広島でもそうですけど、僕は自分がゲームメーカーだという意識を持ってやっています。今、攻撃を早くしていいときか、それとも一旦、落ち着かせたほうがいいときか。それはGKのところでコントロールできる部分もあるし、前の選手に向けたメッセージにもなると思うんです」