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ダルビッシュを攻略して歴史的偉業!
パイレーツ、21年ぶり勝ち越し決定。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2013/09/14 08:01
9月9日、レンジャーズ戦で好投を見せ、勝ち投手となったゲリット・コール選手。ここまで7勝7敗、防御率3.48と更なる活躍が期待される。
勝ち越しに目標を設定するチームなどない。
この歴史的な偉業とでもいうべき、勝ち越しを決めた試合で、レンジャーズ先発のダルビッシュ有投手に投げ勝ち、7回3安打無失点、9奪三振の好投で勝利投手になったゲリット・コール投手。彼は20年前の1993年には3歳だった。
彼ばかりか、現在出場枠に名を連ねる35選手(9月1日以降のロースター枠の拡大に伴う数)中23人が、1993年には10歳にも満たない少年達だった。
彼らにとって、この連続シーズン負け越し記録は決して実感が湧くものではなかっただろう。
「まったくといっていいほど選手たちに特別な反応はありませんでした」
試合後に、パイレーツのストレングスコーチとして今年で13年目を迎える日本人スタッフの百瀬喜与志氏からこんなメッセージが送られてきた。そしてメッセージは以下のように続いていた。
「皆目指しているところが明らかに上ですね」
当然といえば当然だろう。
シーズンの目標を“勝ち越すこと”に設定して開幕を迎えるチーム、選手など皆無だ。誰もが毎日試合に勝ち続け、その先にある優勝の2文字を目指している。いくら過去に負け越しを続けていても、それは当の選手たちからすれば関係のないこと。優勝もしくはプレーオフ進出を目指すのであれば、シーズン勝ち越しは当たり前のこととなる。
ようやく実った、マイナーからの地道な育成。
ブルワーズ戦で81勝目を挙げ、勝率5割達成を確定させた9月3日にも、やはり選手たちの反応は至って冷静だった。
むしろ記録について聞かれることに辟易している様子すら窺えた。今や攻撃陣の大黒柱になったアンドリュー・マカチェン選手は以下のように話してくれた。
「これ以上ネガティブな話題をしなくていいし、考える必要もない。(記録を止めた)一員になれて嬉しいが、自分たちにとってその記録は関係ないことだ。我々はワールドシリーズを勝つために毎日プレーしている。それがすべてだ。そしてそれに向かって毎日、少しずつ近づいている」