野球クロスロードBACK NUMBER
意外性、つぶやき、そしてケンケン。
SB・松田宣浩が楽天追撃を宣言!
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/09/04 11:35
松田宣浩の代名詞、ケンケン。空振りでもファンを沸かせるエンターテイナーかと思いきや、これは調子のバロメーターでもあるのだ。
首位楽天とのゲーム差が7.5の3位。残り試合は27(9月3日現在)。2年ぶりのリーグ制覇を目指すソフトバンクにとっては厳しい状況である。
それでも、チームのムードメーカー・松田宣浩は前を向き続けている。
「追いかける僕らとしてはまだまだ諦めてなんていませんから。『残り1カ月、何があるか分からない』って気持ちでやらないといけませんし、実際そういう想いでやっていますしね。簡単にシーズンを終わらせるつもりはありませんよ!」
簡単にシーズンを終わらせない――。2006年にプロ入りして以降、「自分にはスマートなプレースタイルは合わない。泥臭く、元気よく声を出してチームを盛り上げる」ことを信念とし、常に高いモチベーションを保ち続ける松田にとっては、毎年不変の金科玉条ではある。
しかし、今年は特に、その信念を貫き通さなければならない理由があった。
WBCに出場した今季、フル稼働のシーズンとなるが……。
初めてWBC日本代表に選ばれた松田は大会前、今季へ向けて明確な目標を掲げていた。
「WBCからシーズンが終わるまでの1年間、全試合にフルイニング出場できる体力は絶対にあると思っているし、大きな怪我をしない限りは出続けるつもりです。今年は3月にWBCがあるので去年のシーズンが終わってからトレーニングを続けていますけど、シーズンでも状態を上げていかないと。最後まで、絶対に落としたらダメだと思うんです」
“フル稼働の1年”は代表初選出の松田にとって未知の領域。意識したからといってクリアできるほど甘い戦いではない。
WBCへ向け早々から体を仕上げた成果もあり、開幕直後こそ安定感を見せたが、交流戦が始まった頃には打率が2割3分台まで落ちていた。数字で判断すれば下降線をたどっていることは明らかだった。
状態が落ちているのではないか――。周囲からそう判断されてもおかしくはない。ただ、松田からすれば、そんな状況も許容範囲。というより「スランプ」という意識さえなかったのかもしれない。
事実、交流戦では全体で3位の3割6分をマーク。打点に至ってはトップの23を叩き出しチーム4度目の交流戦制覇に貢献。この頃から、不振のラヘアに代わって4番に座るようにもなった。
松田の状態は落ちてなどいなかった。
なぜなら、彼のなかには、どんなに数字が伴わなくても乱れない、3つの指針があるからだ。