パワーだけで実績のなかった原澤が夏の大会で化けた！

　低評価には理由がある。

　今大会前まで原澤が公式戦で放ったホームラン数はゼロ本。いくらパワーがあっても結果が伴っていなければ高い評価を与えられないのは当然である。

　私もその名前こそ知っていたが、群馬に来てまでそのプレーを見ようとは思わなかった。しかし、夏の大会に入ると原澤のパワーは全開となる。

　私は、群馬県で既に高い評価を得ていたある選手を見るために群馬大会2回戦の前橋商対前橋東を観戦していたのだが、その時に前橋商の強打者・川野辺将也（捕手）の見事なホームランを目撃することとなった。だが、原澤が3回戦の高崎東戦で放ったホームランは川野辺がぶち当てた防球ネットのさらに上部に達していたという。原澤の打球は120メートル以上の飛距離があったのではないか……というのがこの試合を観戦していた知人の言葉であった。

「ゴロを打ったほうがいいんですかねえ」「自分のスイングをしろ！」

　健大高崎戦に戻ろう。

　第2打席、健大高崎守備陣は外野4人シフトを敷かず、初球、2球目とボール球から入った。当然、敬遠のフォアボールだと思ったが、健大高崎バッテリーは3球目を外角ストライクゾーンに入れた。原澤はこれを見逃さずに三遊間を破り、三塁走者を還した。

　0対2でリードされた3回表、2死一・三塁という場面を考えれば、よく勝負に集中できたと感心するほかない。

　第3打席は再び外野4人シフトが復活し、原澤はボールカウント1－1からのストレートを打って、あわや右中間ホームランかという大飛球を放った。第4、5打席も外野守備には4人が就いて、原澤はともにライト前にヒットを放ち、9回表には勝ち越しとなる4点目のホームを踏んでいる。5対3のスコアを考えれば、5打数3安打1打点1得点の成績は十分チームに貢献したと言っていいだろう。

　試合後、五十嵐卓也監督と原澤本人に話を聞くと、面白いエピソードが聞けた。

　健大高崎の外野4人シフトの前に第1打席であえなく凡退したあと、「ゴロを打ったほうがいいんですかねえ」と原澤が自ら申し出、五十嵐監督はそれに対して「意識することはないから自分のスイングをしろ！」とアドバイスしたという。

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